血圧が高いことを医師や栄養士などに指摘されると、必ずといっていいほど「塩分に注意するように」と言われます。それもあって、高血圧の一番の原因は塩分(ナトリウム)の摂りすぎだと思っている人も少なくありません。確かに塩分によって血圧が上がる人がいるのですが、その割合は30%ほどです。これはナトリウム感受性といって、ナトリウムに反応して血圧が上昇することを指しています。この感受性が低い人はナトリウムで血圧が上昇することもなければ、逆に血圧が高いことで塩分を減らしても血圧に変化が起こらないわけです。塩分の他にも高血圧の原因としては肥満、糖尿病、動脈硬化、腎臓のナトリウム排泄不足、ストレスなどなど、複数のことがあげられます。
ナトリウム感受性のレベルは一生涯変わらないとされています。高齢社会を反映してか、年齢を重ねるとナトリウムに過敏に反応する人が増えてきます。このことに触れたのは、よく相談をしてくるテレビのディレクターから「なぜ?」と質問されたからです。
ナトリウムを摂っても血圧に影響しなかった人は、全員がナトリウム感受性が低いわけではなく、他の要因のせいもあって、それぞれが一定の度合い以下であったことが関係しています。ナトリウム感受性は“ある”“ない”という単純な区分ではなく、“高い”“低い”ということで、低い人、低めの人は他の要因が重なることで血圧の上昇がみられます。ナトリウム感受性が低めであっても、他の要因のリスクが低かったから血圧に関係しなかっただけで、年齢を重ねると、どうしても動脈の硬化が進みやすく、他の身体の状態も低下してきます。
ナトリウム感受性が低い人であっても、ナトリウムの影響は必ず受けています。その影響は、ナトリウムの水分吸着作用です。塩を放置しておくと固まってきますが、これはナトリウムが空気中の水分を吸ったための変化です。血液中に入ったナトリウムは水分を吸着します。その量が多くなると血液中の水分が多くなり、血管の圧力が高まります。
ナトリウムが濃い状態になると、血管の細胞の中にもナトリウムが入り込み、これも水分を吸って、細胞が膨らむことになります。血管の細胞が膨らむと、その分だけ血管内が狭くなり、これも血圧を高めることになります。
血管の弾力性がよい若いときには、このようなナトリウムの影響は受けにくくても、加齢によって弾力性が失われるにつれて影響を受けるようになります。これがナトリウム感受性と加齢による血圧上昇の理由と説明しました。