COVID-19パンデミックをきっかけに、プライマリ・ケア(身近でなんでも相談できる総合的な医療)を担う「かかりつけ医」の役割に大きな注目が集まっており、医療制度議論においても、かかりつけ医機能の強化が重要な論点になっています。
しかし、かかりつけ医の有無等が経時的にどのように変化するか、住民を追跡した縦断研究は、これまで国内で実施しておらず、またかかりつけ医が提供する機能が、その変化にどのような影響を及ぼすかは国際的にも明らかになっていませんでした。
東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター臨床疫学研究部の研究グループは、全国的な縦断研究を実施して、調査委開始時点でかかりつけ医を持つ住民をコロナ禍の1年間(12か月)追跡しました。
その結果、12.8%でかかりつけ医として相談できる医師がいなくなり、6.3%でかかりつけ医の自発的な変更があったことが明らかになりました。また、かかりつけ医の喪失や変更は、高いプライマリ・ケア機能を発揮する医師を持つほど少ないことも明らかになりました。
この研究はプライマリ・ケアに関する代表性の高い日本人一般住民を対象とした全国前向きコホート研究のデータを用いて実施されました。民間調査会社が保有する約7万人の一般住民集団パネルから、年齢、性別、居住地域による層化無作為抽出法を用いて、40〜75歳の住民が選定されました。
調査開始時点でかかりつけ医を持ち、追跡調査を完了した725人を解析対象として、追跡期間中の93人がかかりつけ医として相談できる医師がいなくなり、46人が自発的なかかりつけ医の変更が発生しました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕