コロナ禍におけるストレスや在宅勤務の増加により、コロナ禍前と比べて飲酒量が増加していることが問題となっていますが、労働者においては労働生産性の低下を招く要因ともなり得ることから、その対策が世界的に重要視されています。
WHO(世界保健機関)は、問題飲酒が世界中の人々の健康に対する主要な危険因子の一つであり、持続可能な開発目標(SDGs)の多くの健康関連の目標に直接影響を及ぼすことを報告しています。
その中でも、労働者の問題飲酒の割合が学生や主婦などと比較して高いことや、労働者の問題飲酒がプレゼンティーズム(出勤しているが業務効率が落ちている状態)やアブセンティーズム(仕事を休業・欠勤している状態)を引き起こし、労働生産性の低下につながる可能性があることが報告されています。
そのため、労働者の問題飲酒を予防することは、世界的に重要な課題であると言えます。これまで仕事の特性や家庭生活、社会活動の有無が、それぞれ労働者の問題飲酒のリスク要因であることは明らかとなっていますが、仕事のストレスや仕事のパフォーマンス、仕事と家庭のバランス、家庭以外での他者との関わりを含めて、男性と女性おのおので問題飲酒のリスク要因を詳細かつ包括的に明らかにした研究はありませんでした。
富山大学学術研究部医学系の研究グループは、労働者の問題飲酒を防ぐための示唆を得るために、労働者の問題飲酒の関連要因を仕事の側面だけでなく、家庭生活や社会活動の観点から包括的に明らかにすることを目的として、研究を行いました。
2014年の日本公務員研究参加者の4552名のうち、調査項目に回答のあった3136名のデータが分析対象とされました。調査項目は、基本属性(性別や年齢など)、飲酒習慣(飲酒頻度や飲酒量、問題飲酒の有無)、仕事の特性(仕事のストレスや主観的な仕事のパフォーマンスなど)、ワーク・ライフ・バランス(婚姻状況や仕事と家庭のバランス)、社会活動(知人と関わる頻度や親しい友人の数など)の計17項目です。
分析の結果、問題飲酒の割合は、男性で24.3%、女性で10.3%でした。
男性は家庭が原因で仕事に影響がある人は、ない人に比べて1.54倍、仕事が原因で家庭に影響がある人は、ない人に比べて1.63倍、主観的な仕事のパフォーマンスが悪い人は、よい人に比べて1.34倍、問題飲酒が多いことが明らかになりました。
女性は仕事が原因で家庭に影響がある人は、ない人に比べて2.45倍、親しい友人が少ない人(3人未満)は、多い人(3人以上)に比べて1.59倍、問題飲酒が多いことが明らかになりました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕