塩味がおいしいから摂りすぎる

おいしいものとして甘いものと脂肪が多いものを、これまで取り上げてきましたが、もう一つ忘れてはならないのは塩味です。昆布や鰹節で出汁(だし)をとっても、これに塩味が加わらないと本当のおいしさを引き出すことはできません。塩分の摂りすぎは血圧を上昇させることから、おいしい塩味を我慢している人は少なくありません。
加工食品を買うときには塩分量が表示されているので、見比べて塩分量が少ないものが選ばれる傾向があります。しかし、塩分が少ないとおいしく感じにくくなるので、おいしいのに塩分量が少ないものが考え出されています。
しっかりと研究して、それを成功させているならよいのですが、ナトリウム量を表示して、塩分控えめを打ち出しているものがあります。それはなぜかというと、ナトリウム表示だと数値を少なめに見せることができるからです。ナトリウムは塩を構成する一部であって、ナトリウム量が表示されているときには、それを2.54倍したものが塩分量になります。少なくとも表示されている数値が塩分量なのかナトリウム量なのかは確認しなければならないわけです。
塩分控えめであってもおいしく感じるように料理をするテクニックとして、後で塩を振るという方法があります。塩味は舌の表面にある味蕾で感じるので、表面に味がついているだけで塩味をキャッチしておいしく感じます。ところが、塩を先に振ると中に染み込んでいって舌で感じるよりも多くの塩分を摂ることになります。塩を加えて煮込むと完全に中まで染み込んで、より多くの塩分を摂ってしまうことにもなります。
このことがわかったところで、注意をしたいものがあります。それは塩飯です。昔からあるおにぎりを塩だけで握ったものではなく、米飯の加工食品に表示されている「塩飯」です。
おにぎりや弁当のご飯は塩分を強くしたほうが腐りにくくなります。ナトリウムには水分を吸着する作用があり、水分量が減ることによって細菌の繁殖が抑えられて腐りにくくなります。腐りにくくなっても塩味が強くなりすぎると売れなくなります。そこで使われているのが、ご飯を炊く段階で水に塩を加える方法で、中に染み込んでいる割には塩分を感じにくくなります。
食品表示では原材料として「米、塩」と書く必要はなく、「塩飯」とだけ書けばよいので、塩が多いことを伝えなくてもよいことになります。食品添加物を調理後に加える場合には、保存料などと表示しなければならないのですが、塩飯を作る段階で食品添加物を加えた場合には「塩飯」とだけ書いて、無添加であるのと同じに見えるように表示することができます。保存料は細菌の増殖を抑えて、腐らないようにするだけでなく、変質して味が変わらないようにするために使われます。
塩飯が使われていると、おかずの味付けが薄くても全体的に塩分の量が多くなるので、ナトリウムで血圧が上がりやすい人は特に注意しなければなりません。