塩分の摂りすぎで細胞の働きが低下する

体内の60%ほど水分だと言われています。そんなにも多いのだから運動で汗をかいても、問題はないのではないか、という質問を健康セミナーで受けたことがあります。それと同じ質問を新聞社の記者からされたこともあります。体重が60kgだとすると、その60%なら36kgになる計算なので、2リットル(2kg)の水分が失われても5%ほどの量なので、大したことはないと考えるのかもしれません。
しかし、体内の水分のうち3分の2ほどは細胞の中にある細胞内液となっています。細胞は一定量の水分が保たれていることで正常な働きをします。この水分は失われてはいけない水分なので、この分を引くと体重60kgのうち20kgで、この細胞外液は血液やリンパ液などの水分です。20kgの水分のうち2kgの水分が減るのは大きな変化です。血液中の水分が大きく減ると血液がドロドロになりやすく、血流が低下したり、血栓ができることもあります。
だから水分補給は必要となるわけですが、運動では水分と一緒にナトリウムも排出されるので、ウォーキングの際には塩飴を舐めるなど塩分の摂取も必要とされます。それは正しいことであっても、塩分の摂りすぎには厳重な注意が必要です。それは細胞の水分量が大きく変化する危険性があるからです。
細胞内液にはミネラルのカリウムが多く、細胞外液にはナトリウムが多く含まれています。ナトリウムが濃くなるとナトリウムは細胞内に入っていきますが、そのときにエネルギー源になるブドウ糖やアミノ酸が取り込まれていきます。これは必要なことであり、ナトリウムが細胞に取り込まれると、その分だけカリウムが細胞から出ていきます。ナトリウムには水分を吸着する働きがあるためにナトリウムが多くなるほど細胞内の水分が増えるわけですが、水分の量は少ないだけでなく多くても細胞は正常な働きをしなくなります。
全身の約60兆個の細胞は、それぞれが内部にあるミトコンドリアという小器官でエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)が作り出されています。このATPが細胞のさまざまな働きを起こしています。このATPを多く作り出されるかどうかは三大ヒトケミカルのα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10の量にも関わっていますが、もう一つ重要なことが一定の水分量であることです。その水分量を増やして細胞を水ぶくれ状態にして働きを低下させるナトリウムです。
ナトリウムは塩化ナトリウムの構成成分で、つまり塩に多く含まれています。塩分の摂りすぎは細胞内の水分を増やすということは、血液中の水分を減らすことにもなります。細胞が働きにくくなり、さらに血流が正常でなくなったら、全身に影響が出ることも当然のように起こります。
塩分の摂りすぎというと高血圧ばかりが言われがちです。高血圧は全身に影響を与えるわけですが、もう一つ全身に影響を与える理由があったのです。