健康のために野菜を食べているという人は多く、お酒を飲むときにも野菜中心という人もいます。糖質制限の流行から、お酒を飲むときにも糖質が少ない日本酒やビールを選んでということも目立ってきています。糖質制限居酒屋なるものも登場していて、お酒もアテ(つまみ、おかず、肴)も糖質制限にして、シメの糖質もやめているという人もいます。
しかし、糖質制限をすると満腹感が得にくくなります。脳が満腹感を得ているわけですが、それは血液中のブドウ糖の量に反応して、満腹中枢が刺激され、満腹になったので、これ以上は食べないでよいというサインが出されます。空腹を感じさせているのもブドウ糖で、ブドウ糖が不足すると空腹となって、ブドウ糖が多く含まれているもの、つまり糖質(炭水化物)への食欲が高まります。
飲酒をすると肝臓はアルコールを分解することが優先されるために、日常的に行われている血糖値の調整ができにくくなります。血糖は血液中のブドウ糖のことです。日常的に肝臓は何をしているのかというと、血液中で多くなったブドウ糖の一部を蓄積して、血液中で不足したときに血液中に放出する役割です。これによって飲食による糖質が不足したときに血糖値が大きく低下しないようにしています。飲酒時の糖質制限は一時的に血糖値を低下させて、糖質への欲求を高めます。だから、お酒を飲んだ後には、たくさん食べているのに甘いものやラーメンが食べたくなってしまうわけです。
飲酒をしているときの糖質制限は血液中のブドウ糖が減って、空腹を強く感じるようになるので、シメのご飯、麺類はおいしく食べられます。
飲みながら、いくら質問が出たからといっても、このような話をすると興ざめをしたりもしますが、「酒を飲んでも糖質なしで平気」と言っている広告代理店の営業マンがいました。糖質制限をしているというわりには太っているのが気になって、どんなアテを食べているのかと思って、“観察のために”一緒に飲食をしました。「糖質制限」と言っているのに、糖質制限をしている人がよく話す「野菜を食べている」と話していたのに、初めに注文したのはポテトサラダでした。これを注文するときに「マカロニサラダは糖質が多いからポテトサラダにしている」とも言っていました。
サラダというと野菜に調味料をかけるか、和えたものを指します。だから、サラダという名称は野菜に使われる言葉のはずです。しかし、ポテトサラダは、サラダと呼ぶのが正しいのかと疑問も抱かれます。ポテトサラダの材料のジャガイモは食品の分類では野菜ではなくイモ類です。イモ類というと食物繊維が豊富な食品としても語られるので糖質だというイメージがないのかもしれませんが、イモ類は糖質食品そのものです。
ジャガイモの糖質は100g当たり16gを超えています。市販のポテトサラダは120g程度なので、20gの糖質が含まれていることになります。アテとして出されたポテトサラダは山盛りで、200gほどはありそうでした。これでやめておいてくれればよかったのですが、飲酒も峠を越えて、そろそろ糖質が欲しくなってくる時間帯になったとき、「お代わり」と言ってポテトサラダを注文した段になって、黙っているわけにいかず、ポテトサラダを食べたら糖質制限にならないことを話しました。
営業マンは他人と話すのが仕事で、飲酒の機会が多く、飲むたびに糖質制限のことを話しているようなので、ここでポテトサラダの話をしておかないと、間違ったことが広まってしまうと感じたからでした。また、糖質制限に詳しい人に出会ったら恥をかかせることにもなります。本当なら、糖質制限などやめにして、摂取した糖質はエネルギーとして使うように、アルコールもエネルギーとして燃焼させて、活動のためのエネルギーを増やす方法について話をして理解して欲しいところですが、酒が好き、食べるのが好きという人には、なかなか通用しないものです。