日本人は世界でも特徴的な体質の国民だと言われています。体質は身体的な特徴のことで、遺伝と環境のほか、伝統的な食事内容や活動によって、それぞれの体質が作り上げられてきました。遺伝子は祖先から伝えられ、子孫へと伝えられていくものであり、誕生したときから変わることがないものです。例えば日本人は歴史的に低栄養の時代が長く続いてきたことから、余分となった栄養を脂肪として体内に蓄積されやすく、消費しにくいエネルギー効率が低い体質となっています。
この体質は低栄養の食生活でも生き延びるには大きな利点となっているものの、充分な栄養が摂れる時代には逆に大きな弱点となります。エネルギー源となる糖質(主食に含まれるブドウ糖など)と脂質(中性脂肪やコレステロールなど)は摂りすぎることによって体脂肪として脂肪細胞の中に蓄積されるだけではなく、血液中で過剰になると血管にダメージを与えることになります。日本人は低栄養で生き延びるために腸が長くなり、栄養素を腸から吸収するために働く酵素の働きを高めたことから、特にエネルギー量が高い脂質の吸収がよくなっています。これは食事内容が体質に大きな影響を与えた例として世界に知られています。
体質は民族が同じであれば国民的に同じ傾向が見られるものの、複数の体質に細分化されることもあります。その例としてよく取り上げられるものに肥満遺伝子があげられます。この太りやすくする遺伝子タイプは、日本人の場合は大きく3タイプに分けられています。それぞれのタイプは別の作用で脂肪を蓄積させやすく、消費しにくくさせています。また、日本人は運動をしても筋肉がつきにくく、年齢が進むほど欧米人などよりも筋肉量が減りやすくなっていて、これが加齢による代謝の低下を起こす要因となっています。
脂肪は筋肉細胞の中で多くが燃焼されているため、筋肉量が減るほど血液中の脂肪が増え、脂肪細胞に蓄積される脂肪の量が増えていきます。身体に蓄積される脂肪(体脂肪)は内臓脂肪と皮下脂肪に大きく分けられます。内臓の周りでも特に腸の周りに蓄積される内臓脂肪が多く蓄積すると、脂肪細胞から生理活性物質のアディポサイトカインが多く分泌されて血圧や血糖値を上昇させていくようになります。
日本人は欧米人に比べて血圧も血糖値も上昇しやすい体質であるため、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の基準を定めて、内臓脂肪の過剰な蓄積には注意が呼びかけられています。メタボリックシンドロームは血圧、血糖値に加えて、中性脂肪値とLDLコレステロール値、HDLコレステロール値も合わせて判定されています。内臓脂肪を減らし、これらの数値を抑えることで、血管の老化を防ぐことが目的となっています。
日本人は血管が弱い体質であり、血流が低下しやすく、さらに代謝が低いことから体温が上がりにくい上に、身体の冷えや疲労、痛みのほか免疫低下や活性酸素の過剰発生といった身体の不調も起こりやすくなっています。こういった体質の弱点を知り、その原因を知ることによって、体質に合わせて食事の改善ポイントやケア法も理解できるようになります。