ウォーキング習慣で長生きできるのか

筋力を落とさないために歩くことをすすめる話をしたところ、「歩くと筋力の低下を防ぐだけなのか、長生きできるようになるというメリットはないのか」という質問がありました。足腰を丈夫にしておくと寝たきりにならない、健康寿命も延ばせるということはあっても、平均寿命のほうは延びるのかということが気になるのは当然のことです。ウォーキングによって健康寿命を延ばして、平均寿命も延びる、さらに健康寿命と平均寿命の差が縮まって、昔から言われている“ピンピンコロリ”となるなら、もっとウォーキングを実践する人を増やすことができます。
ウォーキングといっても、散歩程度のレベルから、スタスタと元気に早歩きをするスポーツ的ウォーキングまで強度に差があります。元気に歩いている高齢者は10年後の生存率が高いという研究データがあって、それを質問への返答としましたが、それに対して「高齢になってから元気に歩くことで長生きできるのか」という返しがありました。高齢で元気に歩けるということは、若いときから元気に歩いてきたから今も元気であって、若いときからの蓄積で長生きできるのではないか、という考えですが、蓄積が重要という結論を出しています。
ここで取り上げた研究データは大規模コホート研究の結果で、75〜84歳の高齢者を普通以上の速さ(秒速1.4m以上)で歩けるグループと、歩行速度が遅い(秒速0.4m)で歩けるグループとを比べたところ、10年生存率が3倍も開きがあったというものです。少し詳しく紹介すると、75〜84歳の男性の10年生存率は秒速0.4mでは15%だったのが秒速1.4m以上では50%となっていて、女性の場合は秒速0.4mでは35%だったのが92%となっていたというものです。
秒速1.4mというと時速で5kmとなります。普通歩行の速度として示しているのと同じスピードです。私たちが早歩きとしてすすめているのは時速7kmなので、後期高齢者としてはなかなかのスピードです。秒速0.4mは時速1.5kmと、かなり遅いスピードです。
歩行速度が早まると長生きできる傾向があるといっても、若いときと同じ時速5kmを維持するのは大変です。コホート研究では中央値が秒速0.8mであったということから、時速3kmを目標にして歩くようにしたいものです。その達成のために、私たちは2本のポールを使って歩行するノルディックスタイルのウォーキングの中でもディフェンシブと呼ばれる前つきの歩行法をすすめています。