桜という言葉を聞いて、誰もが思い浮かべるのは春に花を咲かせる、お花見の主役です。花よりも食べられる果実のチェリー(さくらんぼ)のほうを先に思い浮かべる人もいるかと思いますが、桜と感じで書けば、ほぼ花のほうを意味します。ところが、“さくら”と書くと、馴れ合いで賛同する人のことも指します。これは露天商や大道芸人の仲間が客のふりをして、褒めたり高い値段で買うなどして客が買う気を起こすように仕向ける役割のことから発した言葉で、盛り上げ役の人のことを“さくら”と呼ぶこともあります。
漢字では偽客と書かれることもありますが、江戸時代の芝居小屋で役者に声をかける見物人役は、パッと派手に景気よくやって、パッと消えることから、桜の特徴と似ているということで使われるようになったという説があり、桜は無料で見られることから無料で見物する人が“さくら”と呼ばれるようになりました。
無料で芝居を見物させてもらう代わりに、芝居の見せ場で役者に掛け声をかけたり、その場を盛り上げるということですが、無料で参加して、盛り上げるということで思い出すのは、桜を見るイベントです。会場は桜シーズン真っ盛りの公園を借り切って、招待客だけを会場に入れていますが、芸能人や著名人などの招待客が主催者の周りに集っているのを、一般の招待客が遠目に見るというシーンがメディアで流されています。これを見ていると “桜”を見るが意味しているのは花の桜のほうではなくて、桜の下にいる偽客(さくら)のほうではないか、という気がしてきます。
このような偽客を見るのではなく、本来の桜を見るほうのイベントは来年は中止とのことですが、個々に参加するはずのお花見が実は会社の強制であったりして、これも参加者が盛り上げ役にならなければいけないとしたら、これも見ているのが桜なのかという疑問も湧いてきてしまいます。
桜の開花日は地域によって異なり、3月20日前後から4月20日過ぎまでバラツキがあります。天候によって、桜祭りのときに盛りでないということもあります。ちなみに、さくらの日は3月27日です。これは公益財団法人日本さくらの会が1992年に制定しました。この場合の“さくら”は、もちろん桜のことです。