頭がよい子どもの発達障害は軽いのか

子どもの犯罪を恐れるあまりに殺害まで走ってしまった親が高級官僚だったという報道を受けて、その子どもが軽い発達障害であるということがネット情報で流されていました。その根拠としてあげられていたのは、「レベルの高い大学に合格していたから」ということでした。学力が高くて、偏差値が高い大学に合格するだけの能力の持ち主であったら、発達障害ではない、もしも発達障害であったとしても低いレベルしかないという考えからきている発言です。
発達障害児は、自閉症スペクトラム障害、注意欠如・多動性障害、学習障害ともに、学力の面では低いような印象が抱かれがちです。自閉症スペクトラム障害は社会的なコミュニケーションが苦手で、それが学習面ではマイナスに出てしまいがちです。注意欠如・多動性障害は過剰と思われるような行動から、どうしても落ち着いて学びにくくなります。学習障害は、学ぶことそのものに障害が起こっているので、こちらも学力に影響が出てしまいがちです。
こういったことでは、学力面で低くなりがちであるというのは認めることではあるものの、だからといって発達障害では学力が低くて、学力が高ければ発達障害ではないという、あまりに単純なことは言えないはずです。発達障害の状態は、脳の発達の遅れが関係して、そのズレがあるために、普通と思われるようなことに対して、特徴的な行動を示すもので、同じ学力であっても、同じような行動を起こすとは限りません。限らないというよりも、むしろ学力とは関係なしに、重い状態になることもあれば、逆に軽い状態になることも当たり前に起こることもあります。
それなのに、頭がよい子どもの発達障害は軽い、そうでない子どもの発達障害は重いというような印象が抱かれてしまうのは、まだ発達障害の実態が充分に理解されていないからです。むしろ、自閉症スペクトラム障害では成績がよくて、いわゆる頭がよい子であることから発達障害であることが見逃されてしまい、それは発見を遅らせることにもなります。そして、支援が遅れることから、本来の能力が発揮されないという不幸なことにもなりかねません。そのことを知って、発達障害児に向かい合ってほしいのです。