発達障害児に対する目の運動能力

発達障害児は運動が苦手なことが多いのですが、中でもボールやシャトルなどの飛んでくるものに対する感覚が充分に備わっていないことから、他の運動の能力には問題がなくて、運動能力に優れたところがあっても飛んでくるものには的確に対応できないことから、一定の運動能力では“運痴”(運動の音痴)みたいなことが指摘されることがあります。この動くものに対する運痴は、脳の機能が発達していないことのように言われることが多いのですが、目の動きがよくないことが影響していることがあげられます。
自分に向かって飛んでくるものに対する反応としては、目を上下左右に動かして、ピント合わせによって前後でキャッチすることによって、実際に動いているモノを捉えて、これからの動きを予測して身体を動かすことによって、キャッチしたり、打ち返したりすることができます。運動能力ということでは、眼球運動ということが言われます。両眼の眼球運動には、向き運動と寄せ運動があります。向き運動は両眼で同じ方向を向く共同性に運動です。左右の眼は離れたところにあり、同じ対象物を見ても角度の違いがあって、左右では違った見え方をしています。その違いから、その対象物の位置と動きを判断して、それに対する反応をすることができます。
向き運動には衝動性眼球運動(サッカード)と追従眼球運動(パースーツ)があります。衝動性眼球運動は見ようとする物に素早く視線を向けて、網膜の中心窩(網膜の黄斑部の中心)に投影するための眼球運動です。追従眼球運動は空間を移動する対象を物に視線が追随して動いて、ゆっくりと対象物を注視し続ける眼球運動です。
これに対して寄せ運動は両眼が反対方向に動く非共同性の運動で、いわゆる寄り目と開散(寄り目の反対に左右の目玉が外を向く)があります。
この眼球運動がスムーズにいかないために、対象物を目で捉えることができずに、首を動かして、対象物を捉えるようになります。こういった状態だと、素早く対象物を捉えることができにくくなって、飛んでくるものをキャッチしにくくなるのです。