代謝促進成分のL‐カルニチンのLはLevorotatoryの頭文字で、左旋性の意味があります。物質を通過する光の振動面を左に回転させる性質を表しています。これとは逆の右旋性もあって、立体異性体としてL型とR型に分けられます。立体異性体というのは、構造式は同じだが、原子の立体配置が違っているものを指しています。
カルニチンのL型、つまりL‐カルニチンには代謝促進成分として脂肪酸と結びついて細胞の中のエネルギー産生器官のミトコンドリアの膜を通過させる働きがありますが、R型には、そのような働きはありません。
カルニチンは必須アミノ酸のリシン(リジン)とメチオニンを材料にして肝臓で合成されるアミノ酸の一種で、体内でタンパク質の形にならない遊離アミノ酸の一種になっています。カルニチンという名称は、筋肉の中にある成分として発見されたことから、肉を意味するラテン語のcarnis(カルニス)にちなんで命名されました。Carnival(カーニバル)は謝肉祭のことですが、これもcarniから名付けられています。
L‐カルニチンは肉類の筋肉の中に多く含まれていて、成人では体内に20g(2万mg)ほどが含まれています。前回、1日に肉食によって60〜180mgを摂取していると説明しましたが、肉食が全体的に少ない日本人は体内の保持量が少なく、そのために脂肪酸の代謝能力が低いことが指摘されています。
立体異性体ということでは、同じ代謝促進成分のα‐リポ酸が例としてあげられます。α‐リポ酸にはS型とR型があり、体内で合成されるのはR型です。サプリメントにはS型もR型も使われていて、ともに体内で作用します。R型は胃液で分解されやすいために、サプリメントの種類としてはS型が多く使われています。しかし、S型は動物試験では害が確認されたことからペット用のサプリメントでは使用が禁止されています。人間の場合には、危険性を調べる試験が行われていないために、S型の使用が続いているという実態があります。