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運動を始めると、細胞の中ではエネルギー不足の状態が起こります。これを解消するために、できるだけ多くのエネルギーを作り出そうとして細胞のミトコンドリアの中でATP(アデノシン三リン酸)がリンを2個外してAMP(アデノシン一リン酸)に変化してエネルギーが作り出されます。

細胞内にAMPが多くなると、エネルギーの枯渇状態を感知してAMPキナーゼ(アデノシン一リン酸キナーゼ)という酵素が活性化します。このAMPキナーゼが指令を出して血液中のブドウ糖が取り込まれるという仕組みになっています。

ATP系のエネルギー消費は10秒間ほどで終わり、そのあとは乳酸系と呼ばれる無酸素状態でブドウ糖を主にエネルギーとして使う運動となりますが、乳酸系運動は10分ほどしか続かず、そのあとも運動を続けると、有酸素系と呼ばれる脂肪とブドウ糖をエネルギーとして使うエネルギー代謝へと切り換わっていきます。

ウォーキングを始めたときには、平常時に比べると多くのエネルギーを、すぐに作らなければならないので、代謝しやすいブドウ糖を先に代謝させます。ブドウ糖が中心になって代謝するのは10分間ほどです。そのため、血糖値を下げるためには、10分間のウォーキングを何度か繰り返す方法がすすめられます。

血糖値が高いことを指摘されて、運動をするように言われると、以前に運動をしていた人は、その運動を再開させたり、走ったりしがちです。しかし、血糖値が高めの人に激しい運動は禁物です。

心拍数が高まりすぎる運動は、心臓や血管の負担が大きくなります。血糖値が高い状態が続いていると血管の細胞が傷みやすくなり、強い負担がかかります。それが合併症のきっかけとなることも考えられます。歩くことは血管にダメージを与えない運動という意味でもすすめられています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

日本糖尿病学会「糖尿病治療ガイド」では、運動について紹介されています。

◉運動の種類:インスリン感受性を増大させる有酸素運動と筋肉量を増加し筋肉増強効果のあるレジスタンス運動がある。肥満糖尿病患者では、両者を組み合わせた水中歩行が膝への負担も少なく安全で有効な運動である。

◉運動強度:最大酸素摂取量の50%前後が推奨される。強度の程度は心拍数で判定し、50歳未満では1分間に100~120拍、50歳以降では1分間100拍以内に留める。または「楽である」または「ややきつい」といった体感を目安にする。

◉運動負荷量:歩行運動では1回15~30分、1日2回、1日の運動量として歩行は約1万歩、消費エネルギーとしてはほぼ160~240kcal程度が適当とされる。

◉運動の頻度:日常生活の中に組み入れ、できれば毎日、少なくとも1週間に3日以上の頻度で実施する。

◉インスリンやスルホニル尿素薬(SU薬)を用いている人では低血糖に注意する。

※運動療法を禁止した方がよい場合として、①糖尿病の代謝コントロールが極端に悪い場合(空腹時血糖値250mg/dl以上、または尿ケトン体中等度以上陽性)、②糖尿病網膜症(増殖網膜症・増殖前網膜症)による新鮮な眼底出血(眼科医に相談)、③顕性腎症後期以降の腎症(血清クレアチン:男性2.5mg/dl以上、女性2.0mg/dl以上)、④虚血性心疾患や心肺機能障害(専門医の意見を求める)、⑤急性感染症、⑥高度の糖尿病自律神経障害がある。

運動を制限した方がよい場合として、①骨・関節疾患(専門医の意見を求める)、②糖尿病壊疽、③単純網膜症、④重症高血圧(収縮期180㎜Hg以上、または拡張期血圧110㎜Hg以上)がある。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

7)アルコールの制限
糖尿病の場合には、アルコール飲料は原則として禁止されます。その理由は、エネルギー量が1gあたり約7kcalと高く、吸収されやすいので血糖値が上昇しやすいことに加えて、食欲が進むために食べすぎの原因にもなるからです。

血糖値があまり高くない人の場合には、条件つきで1日に160kcalほどの飲酒が許されることもあります。その量はビールではコップ(180cc)に1杯半、日本酒ではコップに3分の2ほどです。飲酒で摂るエネルギーの分は、ご飯を減らすといったように摂取エネルギー量の調整をする必要があります。

飲酒の条件は、「体重が標準体重以下であること」「肝臓病や膵臓病、合併症がないこと」「ビタミン、ミネラルが充分に摂れていること」「決められた飲酒量で止められる意志があること」。これらの条件がすべてかなえられている人にのみ飲酒が許可されます。

少ない量では物足らないという場合には、数日分をためておいて飲むという方法もありますが、一度に多飲するのは避けます。飲酒は血糖値を急に上昇させやすいだけに、できれば控えるようにしたいものです。

8)甘いものの制限
菓子類や清涼飲料には、砂糖が多く含まれていて血糖値が上昇しやすいので、控えるようにします。清涼飲料は冷えていると甘さを感じにくいものの、常温で飲むとかなり甘く、砂糖が多く含まれていることがわかります。飲料では、糖質が特に吸収されやすい形となっているので、注意が必要です。

9)規則正しい食生活
一度食事を抜くと、その次の食事は空腹感を満たすために食べる量が多くなり、食べすぎになるため、血糖値も上昇しやすくなります。1日3食を規則正しく取り、できるだけ3食が同じような分量になるようにします。理想の3食のバランスは、朝食3:昼食3:夕食4の割合とされます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

3)ビタミンとミネラルの充分な摂取
ビタミンとミネラルはエネルギー代謝を促進して血糖値を下げる役目をすると同時に、血管の再生を進めるためにも大切なものです。ブドウ糖の代謝に特に必要なのはビタミンB₁で、これは豚肉、うなぎ、魚介類、豆類、そばなどに豊富に含まれています。

ビタミン、ミネラルを充分に摂るためには緑黄色野菜をはじめとした多くの食品を摂るようにして、肉類、乳製品、海藻も欠かさないようにします。

4)色の濃い食品の摂取
緑黄色野菜などの色の濃い食品には色素が豊富に含まれていますが、色素は活性酸素を消去する作用がある抗酸化成分となっています。

5)食塩の制限
食塩に含まれるナトリウムは血圧を上昇させて血管を傷めやすいうえに、塩分が強い食事は食欲を高めて食べすぎにつながります。一般の人では1日10g以下を目標にしますが、高血圧の人の場合には6g以下に制限されます。

6)食物繊維の充分な摂取
食物繊維は、糖質が胃で消化されるのにかかる時間を長くし、ブドウ糖が小腸から吸収されるのを遅らせる作用があるため、血糖値が上昇しにくくなります。

食物繊維が豊富な野菜を1日に350g以上を摂り、水溶性食物繊維であるキノコ、海藻なども充分に摂るようにします。
水溶性食物繊維は水分を吸収して膨らみ、満腹感が得やすく、余分に摂った糖質や脂肪の一部を包み込んで吸収を妨げる作用もあります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

1)適切なエネルギーの摂取
血糖値はブドウ糖の増加によって高まっていくため、食事の改善ではブドウ糖が含まれた糖質を減らせばよいように感じるかもしれません。しかし、血糖値を下げるには糖質を減らすだけでなく、適正なエネルギー量を確保するとともに、三大エネルギー源のバランス(エネルギー比率)が基本となります。

血糖値を下げるためには、代謝を高めることが大切であり、体を正常に働かせるためにエネルギーとなりやすい糖質が必要となります。三大エネルギー源をバランスよく摂るには、糖質が50~60%、脂質が20~30%、たんぱく質が15~20%の割合となるようにします。

1日に必要な摂取エネルギー量は体重、活動量、血糖値、肥満度、年齢、性別、合併症の有無などによって異なりますが、一般には健常者よりも10~20%減らした腹八分目の量が目安とされます。また、体重1kgあたり30kcalを目安にする方法もあり、体重が50kgなら1500kcal(30kcal×50kg)となります。

2)良質なたんぱく質の摂取
糖尿病の合併症を予防するためには、血管を傷めないようにすると同時に、傷んだ血管の修復を進めるために、良質なたんぱく質が必要となります。

良質なたんぱく質とアミノ酸のバランスがよく、必要な量が摂取できるもので、これに該当する食品として肉、魚、卵、牛乳、大豆・大豆製品(納豆、豆腐)などがあげられます。たんぱく質の量は標準体重1kgあたり1.0~1.2gとすることが推奨されています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

糖尿病によって高血圧になる理由として、以下のことがあげられています。

①循環血液量が増える
血糖値が高い状態では体内の細胞の浸透圧が高くなり、水分が細胞内から細胞外に出てきたり、腎臓から吸収される水分の量が増えるようになります。その結果、血管の中を循環する血液の量が増えて、血管を圧迫して、血圧が上昇します。

②インスリン抵抗性がある
糖尿病の人はインスリン抵抗性があります。インスリン抵抗性は、インスリンの作用を受ける細胞の感受性が低下している状態のことで、この状態ではブドウ糖が細胞に多く取り込まれず、血液中で多くなったブドウ糖が尿と一緒に排泄されるようになります。

インスリンが効きにくくなると、それを補うためにインスリンが膵臓から大量に分泌されるようになり、高インスリン血症となります。

高インスリン血症では、交感神経の働きが盛んになり、腎臓でナトリウムが排泄されにくくなるために、血管の細胞の成長が促進されて血管の壁が厚くなっていきます。そのため、血管が拡張しにくくなり、血圧が上昇します。

③糖尿病性腎症
糖尿病性腎症では、腎臓の細くて弱い細小血管である糸球体がもろくなっていくために、充分に濾過ができなくなり、体内の有害物質が多くなっていきます。糖尿病性腎症になると、腎臓から血圧を上昇させるホルモンが多く分泌されるようになり、血圧が上昇します。

④肥満
糖尿病患者の約60%が肥満となっています。糖尿病の人は半数が高血圧になるリスクがあるとも言われています。内臓脂肪が多く蓄積されると、脂肪細胞からアンジオテンシノーゲンという血圧を上昇させるアンジオテンシンⅡのもとの物質が盛んに放出されます。

また、アンジオテンシンⅡはインスリンの作用を抑制したり、膵臓を障害してインスリン分泌を低下させる作用があるため、肥満によって糖尿病が発症しやすくなります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

糖尿病の合併症は血管が傷むことによって起こりやすいだけに、血管にダメージを与える他の要因が加わることによって、合併症が起こりやすくなることが指摘されています。

最も合併症に影響を与えているのは血圧です。糖尿病によって血管の弾力性が低下してくると、血流を確保するために心臓の圧力が高まり、高血圧になりやすくなります。このことが動脈硬化の危険性を高めています。

国民健康・栄養調査(2023年)によると、高血圧患者(高血圧症有病者)は男性の25.5%、女性の22.5%と、生活習慣病の中でトップの数となっています。

血圧の抑制目安である降圧目標値を見ると、糖尿病の合併症がある人の場合には、拡張期血圧は130mmHg、収縮期血圧は80mmHgと『高血圧の治療ガイドライン』では、過去に比べて最も低く設定されています。

糖尿病になると高血圧になりやすいだけではなく、両方の病気が重なることで動脈硬化が進みやすくなることが指摘されています。

心臓病のリスクは、健康な人の危険度を1とした場合に、肥満、高血圧、高血糖、高トリグリセライド(中性脂肪)血症の危険因子の1つがある場合には5.14倍、2つある場合は5.76倍、3つから4つを併せ持つ場合には35.80倍と大きく跳ね上がることが知られています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

三大合併症は比較的早く発症するものですが、血管のダメージは全身に影響を与えます。その代表的なものは動脈硬化と免疫低下です。

◎動脈硬化
高血糖状態が長く続くと、大きな血管が傷む動脈硬化へと進み、心臓疾患や脳血管疾患の障害の危険性も高まります。糖尿病患者は一般の人に比べて2倍以上も動脈硬化になりやすい傾向があります。

そのため、糖尿病では、血糖値を下げると同時に、抗酸化成分を摂ることも大切とされます。抗酸化成分には、ビタミン類、植物の色素(ポリフェノール)のほか、サプリメント素材のアスタキサンチン、イチョウ葉エキス、コエンザイムQ10などがあります。

◎免疫低下
高血糖状態では赤血球の色素であるヘモグロビンとブドウ糖が多く結びついていきますが、このときに活性酸素が多く発生することが確認されています。活性酸素は血管壁を傷つけるとともに、血液中のコレステロールを酸化させて動脈硬化を進めていく要因となります。

糖尿病になると血液中のブドウ糖濃度が高くなり、赤血球がブドウ糖によってベタついたり、赤血球同士がくっついた状態になって血流が悪くなります。そのために血液中の免疫細胞(白血球、リンパ球)の流れも悪くなり、免疫力が低下していくことになります。これも影響して糖尿病患者の10人に1人ほどが感染症で亡くなっています。

日本人の平均寿命は女性が約87歳、男性が約81歳となっていますが、糖尿病患者の平均寿命は男女ともに10~12歳も短くなっています。それだけ糖尿病は血管を傷つけ、全身に影響が出やすい病気だということがわかります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

糖尿病の合併症の中でも発症数が多い腎症、網膜症、神経障害は三大合併症と呼ばれています。

◎腎症
慢性腎不全によって人工透析を始める人は年間30万人を超えていますが、そのうち約44%は糖尿病性腎症が原因で、もともと腎臓に原因があった人の割合を上回っています。

糖尿病性腎症で人工透析を始めた人の寿命は、それ以外の腎機能障害が進行して人工透析を始めた人よりも、年齢によって違いはあるものの5年ほども短くなっています。

一般の腎臓病は血液を濾過する糸球体が徐々に侵されていくのに対して糖尿病性腎症は細小血管だけでなく、糸球体も全体的に侵されるために合併症の進行が早くなります。

◎網膜症
糖尿病性網膜症では亡くなることは少ないものの、1年間に新たに約3000人が視覚障害になり、障害者手帳を交付されています。この多くは失明にまでいたっています。失明のほとんどは網膜剥離によるものです。

目は機能維持に多くの酸素を必要としていますが、血管がもろくなると運ばれる酸素量が少なくなります。そのため新しい血管を作り出します。この血管は弱く、ショックを受けたときに網膜ごと剥がれ落ちることがあります。

◎神経障害
神経障害は、合併症の中では比較的早く現れやすく、細小血管が傷んで神経細胞に血液が充分に送られなくなることから起こります。知覚神経の感覚が鈍くなっていると、足にできた傷が気づかないうちに悪化して壊疽(壊死を起こして部分的に腐っていく)となり、足の指や足の切断までいたる人も多くなっています。

壊死になるのは糖尿病によって免疫力が低下していくことも関係しています。
神経障害は知覚神経だけでなく、自律神経にも起こり、体温の調整が乱れ、ホルモン分泌に悪影響が出ることにもなります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

「糖尿病で死ぬことはない」とは、検査を受けて高血糖を指摘された人が、よく口にする言葉です。こういった感覚が、糖尿病の受診を遅らせる原因となっています。

糖尿病になったからといって、それだけで亡くなることはないものの、年間の死亡原因を見ると、糖尿病は以前は第10位前後でした。今では順位は下回っていますが、それでも年間に約1万6000人が亡くなり、数としては増えています。

その多くは合併症によるものです。

糖尿病の合併症で亡くなる人の多くは腎症によるもので、これは細くて弱い細小血管がもろくなることによって起こります。

高血糖状態が5~10年も続くと、細小血管が高濃度のブドウ糖にさらされ、血管細胞内にブドウ糖が多く入り込み、新陳代謝が弱まっていきます。これによって血管の弾力性が失われていくようになり、血流が大きく低下するようになります。

また、赤血球によって運ばれる酸素量が減るために、全身の細胞に届けられる酸素が減り、このことも新陳代謝に影響を与えます。

これは古くなったゴム管がボロボロになっていくのと似た状態であり、ボロボロになったゴム管が元には戻らないのと同じように、血管も高血糖にさらされ続けると、元には戻りにくくなります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕