「筋肉は若いうちは運動をすれば増えるけれど、年齢を重ねてからは増えない」と勘違いしている人が少なくありません。中高年以降は筋肉運動をしても筋肉が増えにくいのは事実です。しかし、それは運動量が足りないことと、筋肉を増やすために必要な栄養素や成分が不足しているためです。的確な補給と運動をすれば筋肉が増えないということはありません。
筋肉の細胞は筋繊維と呼ばれる細長い形をしています。この筋繊維は誕生したときから数は同じです。普通のイメージからすると、筋肉は刺激を強く受けて必要性が高まると数が増えていって太くなるように感じるかもしれません。実際には、そのようなことは起こっていなくて、一つひとつの筋繊維がたんぱく質を取り込んで太くなっていっているだけです。ということは筋肉運動をすれば、いつでも筋肉は全体的に太くしたり、強くしていくことができるわけです。
筋肉を増やすことは自動車にたとえれば、小型の車両に大型のエンジンを載せるようなものです。実際に大型のエンジンを載せたらガソリンが多く使われて燃費が悪い状態になりますが、ダイエットで考えると無駄づかいが多いということは、それだけやせるということになります。
しかし、筋繊維が増えないということは筋肉運動をしないと古くなったたんぱく質が分解されて、だんだんと細くなり、弱くなっていくということです。筋肉を増やすことを「貯筋」といって運動の有効性がPRされていますが、言葉の印象からすると筋繊維が貯金の利息のように増えていくような感じですが、あくまで数は増えていないので、過去に運動をしていれば筋肉の量が保たれるということではないのです。
筋繊維は細くて弱いので、強い負荷がかかると切れます。切れるといっても断裂するわけではなく、部分的に傷ついています。この傷を修復するときにはサテライト細胞(衛星細胞)と呼ばれる筋繊維の周囲にある細胞がたんぱく質を取り込みながら傷ついた筋繊維に入っていきます。これによって修復され、以前よりも太くなっていくのです。
この筋繊維の修復のために必要なのが成長ホルモンで、成長期には身体を大きくしていく働きをしており、その期間が過ぎてからは修復と疲労回復に主に使われていきます。成長ホルモンは筋肉運動をした後に多く分泌されますが、その他に夜に寝ているときにも多く分泌されています。このときに成長ホルモンを使って筋肉が増えているので、睡眠は筋肉を増やすためには重要なことなのです。