糖尿病の治療食はダイエットのための食事として活用されています。糖尿病の治療食というと、血糖値を上昇させるブドウ糖を減らさなければならないという考えをされることがあって、糖質が少ないのが糖尿病治療食と思われがちです。しかし、実際には糖質は全体のエネルギー量のうち50%は確保することが基本となることから、栄養指導を受けて驚く人も少なくありません。
糖尿病の治療食で糖質が多く出されるのは、糖尿病は細胞へのブドウ糖の取り込みが少なくなって、血糖値が大きく高まる病気だからです。取り込みの能力が低下しているのに、ブドウ糖が含まれる糖質を減らしたら、細胞に取り込まれるブドウ糖が不足します。ブドウ糖はすぐにエネルギーになる効率のよいエネルギー源であるので、ブドウ糖不足は細胞の働きを低下させ、細胞レベルから全身の機能を低下させることになります。
糖尿病が怖いのは合併症として細くて弱い血管が傷むところで、腎症、網膜症、神経障害を起こすと、もう元に戻ることができなくなることです。血管の細胞の機能が低下していたのでは血管の老化が進む一方となります。
それなのに糖質制限の流行から、「ブドウ糖が血糖値を上昇させる→血糖値が上昇しすぎると糖尿病になる→血糖値が上昇しなければ糖尿病でない→ブドウ糖を摂らない」という流れが誤って認識されるようになって、間違いを起こすことになっているのです。