病気にならないまま生活していくことは無病息災と呼ばれます。病気というと血圧や血糖値、中性脂肪値が正常値を超えた状態を指すと思われがちですが、これらの検査数値が高い状態は、まだ病気ではありません。血圧が高まりすぎた高血圧が進行して動脈硬化になり、さらに進んで心疾患(心筋梗塞、狭心症など)、脳血管疾患となると、これは病気です。血糖値が高くなって糖尿病と診断されても、この状態から進行させずに平均寿命まで延長させることができれば、糖尿病でなかったのと同じように暮らすことができます。
高齢化社会が大きく進み、65歳以上の高齢化率が27%を越え、100歳以上が7万人に達しそうという時代には、検査数値が一つも問題がないという高齢者は1割もいないとされています。メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)では腹囲が基準を超えて検査数値の2つが基準値を越えた場合に診断されます。1つが引っかかっただけではメタボリックシンドロームと診断されないのと同じように、生活習慣病も1つだけなら病気のリスクが大きく高まることはありません。
未病というのは、検査数値が1つだけ超えた場合で、治療薬が処方されていても、これを病気にまで進行させないことであって、昔から言われてきた「一病息災」と共通する考えです。もちろん、未病医療に取り組む専門家は、未病状態は“病”ではないとの認識なので、一病息災という言葉は使わずに、「未病息災」という言葉を使っています。
未病状態では食事指導と運動指導で、健康な状態に戻していくことができるのですが、食事と運動の生活習慣は変えにくく、食事量を減らすこと、運動量を増やすことを指導しても、なかなか実践されません。そこで量の増減ではなく、いつ行うかのタイミングで効果を高めるメディカルダイエットが未病息災の実践法として注目されているわけです。