江戸時代の儒学者の貝原益軒が記した『養生訓』には、御加数という言葉が出てきます。これは“おかず”のことで、おかずは数を増やすことが健康の秘訣であることが伝えられています。食物繊維に限らず、食品の数を増やして、いろいろな栄養素を摂ることが重要ということです。
多くの食品を食べるというと“1日30食品”が厚生労働省の食生活指針として掲げられていた時期があります。今では使われなくなっていますが、厚生労働省の『国民健康・栄養調査』によってバランスが取れて、量も過不足ない人は平均して17食品であることがわかったからです。しかし、同じようなメニューになりがちな人は、できるだけ食べる種類を変えて、できるだけ単品にならないように“御加数”を増やすことを心がけたいものです。
摂取すべき栄養素はわかっても、食事は栄養素ごとに摂るわけではなく、食品を食べることによって得ています。それぞれの食品によって含まれている栄養素の量は異なっていますが、これさえ食べればすべての栄養素が補給できるという食品は残念ながらありません。そこで必要な栄養素が不足することなく摂れるように、積極的に食べるべき食品が示されています。一般には栄養学で使われる6つの基礎食品群が採用されていますが、もっと簡単にわかるように標語が作られています。それは「まごわやさしい」です。
これは、豆(ま)、ごま(ご)、わかめ(わ)=海藻、野菜(や)、魚(さ)、しいたけ(し)=きのこ、芋(い)を表しています。これらには糖質(芋)、脂質(魚)、たんぱく質(豆、魚)が含まれ、不溶性食物繊維(野菜、芋)と水溶性食物繊維(海藻、きのこ)も含まれています。さらにビタミン、ミネラルの補給に必要な食品ではあるものの、食卓にのぼりにくいものもあります。
「まごわやさしい」に2文字「たち」を加えた「まごたちわやさしい」も最近使われるようになりました。加えられたのは卵(た)、乳(ち)=乳製品で、骨粗鬆症の予防のために骨に必要なカルシウムとたんぱく質を多く摂ってもらうことを目指しています。「まごわやさしい」では不足しがちな動物性たんぱく質を摂ることで、良質なたんぱく質を複数の食品から摂ることが求められています。