全身のエネルギー源うち20%ほどは脳で使われています。重量としては1.2〜1.4kgで、体重の2〜3%しかない脳には非常に多くのエネルギーが必要です。少なくとも1日に100gのブドウ糖が脳には必要とされています。血糖値が高い状態は、脳細胞にブドウ糖が取り込まれていないため、脳細胞の中で作られるエネルギーも少なくなり、エネルギーが不足することから脳を正常に働かせることができなくなるわけです。
脳の中でも特にブドウ糖が多く使われ、インスリンも多く必要となっているのは記憶を司っている大脳辺縁系の海馬です。認知症や、認知症の予備群である軽度認知障害の人は海馬のブドウ糖が少なくなっていることが確認されています。また、インスリンの分泌量が少ないと認知機能が低下することも知られています。
糖尿病患者は認知症のリスクが高く、これまでは高濃度のブドウ糖によって血管の老化が進むことが主な原因と考えられていましたが、脳細胞のエネルギー不足も大きな要因となっていることから、糖尿病予防の重要性が知られるようになってきました。