204 運動による脳の活性化

運動をすると生理活性物質が増えることが確認されています。運動をすることによって増える生理活性物質としては、ホルモン(副腎皮質刺激ホルモン、成長ホルモン、テストステロン、エンドルフィン)、神経伝達物質(アセチルコリン、ドーパミン、トリプトファン)、神経栄養因子(BDNF)、酵素(AMPキナーゼ、KAT)、生理活性物質(t−PA)、血管新生因子(VEGF)が知られています。これらの物質は運動時には安静時の1.2〜1.5倍も増えていて、脳内でも同様に増えていると考えられています。
アセチルコリンには脳で記憶を司る海馬の神経細胞新生促進があり、神経細胞が増えることによって記憶力を改善させる作用があります。神経栄養因子のBDNFにも同様の作用が認められています。ドーパミンは意欲や活力を向上させる脳内ホルモンで、アミノ酸のトリプトファンには神経伝達物質のセロトニンを増やす作用がありますが、セロトニンは抗うつ作用があることから抑うつ状態を改善させる作用があります。
有酸素運動をするとアルツハイマー型認知症を引き起こすタンパク質であるアミロイドβが減ることが確認されています。この変化は、有酸素運動によって血管を新たに作る血管新生因子が脳内で増加して、血流が盛んになることによって起こると考えられています。
AMPキナーゼには細胞にあるインスリン受容体の感受性を高める作用があり、全身の細胞に存在しているものの特に筋肉から多く分泌されています。有酸素運動をするとエネルギー源としてのブドウ糖の消費が増えることがあげられますが、それに加えてAMPキナーゼもあり、より血糖値が下がりやすくなるわけです。AMPキナーゼは有酸素運動を始めてすぐに増え始めるので、短い時間の有酸素運動でも効果があります。