運動をすると筋肉が強化されるとイメージがありますが、運動をしているときに筋肉が増えるわけではありません。筋肉が増えるというと、筋繊維の数が増えると思われがちです。筋繊維というのは筋肉の細胞のことで、繊維状の細胞になっていることから筋繊維と呼ばれています。筋繊維の数は増えたり減ったりするものではなくて、誕生したときから筋繊維の数は変わりません。それなのに筋肉が増えたり減ったりするのは、1本ずつの筋繊維が太くなったり細くなったりしているからです。
筋線維の中でも骨格筋の筋繊維が刺激を受けると、傷つき、その傷を治すために筋繊維の周りにサテライト細胞(衛星細胞)が作られます。このサテライト細胞を取り込んで、筋繊維は太くなっていきます。サテライト細胞ができて、筋繊維に取り込んでいくタイミングは、運動をしているときではなくて、筋肉を休めているときで、運動後に睡眠を取っているときと就寝しているときに起こります。そのときに活躍しているのは、つまり働きを促進しているのは成長ホルモンです。
成長ホルモンは成長期の子供では1日中分泌されていますが、成人以降では寝ているときに多く分泌されるだけで、それ以外の時間帯は少ない量でしかありません。相撲取りは激しい稽古をしたあとに食事をして、その後に睡眠を取るようにしています。これは身体を動かした後に食べて、眠くなって寝るというよりも、筋肉をつけるためのことです。睡眠は筋肉を増やすためには必要なことなのです。
運動後の睡眠も成長ホルモンの分泌を増やして筋繊維を太くする効果がありますが、最も成長ホルモンを分泌させるのは夜の睡眠時です。筋肉は代謝量が多くて、全身の基礎代謝のうち38%は筋肉が消費しているとされています。基礎代謝は全身の消費エネルギー量のうち70%を占めているので、1日の消費エネルギー量の25%ほどは筋肉が消費していることになります。ということは、筋肉を増やすほど代謝が高まるわけで、筋肉を増やすことは結果として体脂肪を減らすことになるのです。