266 腎機能対策のウォーキング

腎機能が低下した場合には、身体を休め、腎臓の機能を回復させることが一番とされるので、運動よりも、まずは休むことが必要になります。しかし、腎機能の低下の原因が、糖尿病の合併症である糖尿病性腎症である場合や、糖尿病性腎症の原因である糖尿病を予防する場合には、運動をして血糖値を下げることが有効となります。
血糖は血液中のブドウ糖のことで、その量が多いと、ブドウ糖は血管の細胞の中に入り込み、糖アルコールに変化します。細胞の中に糖アルコールが多くなると、水ぶくれ状態になって新陳代謝が低下します。そのために血管の細胞の入れ替わりが遅れるようになり、細くて弱い細小血管が徐々に傷んでいきます。そして、充分な血液が送られなくなり、臓器や器官などの機能が低下していくのが合併症です。
合併症のうち腎臓の細小血管が傷んで、腎臓の濾過が充分にできなくなることによって発症するのが糖尿病性腎症です。血液中のブドウ糖は、最も燃焼しやすいエネルギー源で、例えば歩き始めた時点から血液中のブドウ糖が多く使われ、血糖値は下がっていきます。血液中のブドウ糖は、膵臓から分泌されるホルモンのインスリンによって、筋肉細胞に多く取り込まれ、エネルギーとして使われます。
「15分以下の運動では効果がない」と言われることがあります。それは脂肪細胞(白色脂肪細胞)内の脂肪が分解されて効果的に燃焼されるまでに10~15分間はかかるからです。その前に多く燃焼しているのは、すでに分解された脂肪酸とブドウ糖です。
ブドウ糖は紙に、脂肪は木にたとえられることがあります。木に火をつけても、すぐには燃えないものの、紙なら、すぐに燃えます。すぐに紙は燃えてなくなりますが、木は燃え始めるまでに時間はかかっても、長く燃え続けることができます。エネルギー源のブドウ糖と脂肪も同じ関係にあります。
そのブドウ糖が多く燃えて、血糖値が効果的に下げられるのは、有酸素運動では始めてから10~15分間ということになります。ブドウ糖の燃焼はウォーキング程度の運動でも低下させられます。そのことから、血糖値が高い人は無理をして長めに運動をすることはなく、激しい運動をすることもないというわけです。