Medical Diet132 腸内環境とL‐カルニチン

脳細胞を除いた全身の細胞でエネルギーを作り出すために欠かせないL‐カルニチンは、細胞内のミトコンドリアに脂肪酸を通過させる働きがあります。L‐カルニチンは体内で合成されるものの、合成のピークが20代前半で、年齢が進むほど脂肪酸の代謝が低下していくことから、年齢を重ねたら同じ食事量、同じ運動量では太っていく要因となっています。
だから、全身の代謝を高めて、健康を維持するために、サプリメントとしてL‐カルニチンを摂ることがすすめられるわけですが、「腸の健康にだけは効果がない」と言われることがあります。
腸は身体の内側にあっても、口から肛門までを一つの筒と考えると、身体の中ではなくて、外側であると認識されています。腸の中には腸内細菌が棲息しています。腸内細菌のうちの善玉菌が多くなり、活発に働くと腸内環境がよくなり、便通もよくなって健康面でも向上していきます。これとは逆に、悪玉菌が多くなると便通が悪くなり、悪玉菌によって発生した有害物質によって健康面では低下していくようになります。
善玉菌、悪玉菌という区別についてですが、菌の中の生化学反応によって健康のために有益な代謝物が作られるものが善玉菌、健康のために有害な代謝物が作られるものが悪玉菌と呼ばれています。代謝物という言葉が使われていますが、全身の細胞の中で行われているエネルギー代謝とは違っています。
細菌は1個の細胞でできていて、単体で活動ができます。それに対して人間の身体には60兆個以上の細胞があって、それらがネットワークを構成して生命維持をしています。そもそも腸内細菌は赤ちゃんが誕生した瞬間には腸内にはいなくて、生まれてから母親や周囲から移ってきたもので、もともとは身体にはなかったものです。
このようなことから腸内環境にはL‐カルニチンは無関係なものと考えられることもあります。しかし、腸内細菌の活動には温度が重要で、善玉菌は腸内が温まることで増殖して、活動も活発になっていきます。腸内を温めるのは血液で、L‐カルニチンが多くあって全身のエネルギー代謝が盛んになることで血液温度が高まっていくので、L‐カルニチンは腸内環境を整えるために重要な役割をしているのです。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)