「ぎごちない」と「ぎこちない」の正しい使い分け

正しい日本語の使い方を示す辞書は複数が存在しています。その中でも、編集の修行中に使っていたのは「NHK用字用語辞典」でした。これはNHKがテレビやラジオでアナウンサーが使うもので、読み間違いがないようにするのが目的とされていました。

これをNHKではなくて、出版社が採用していました。その会社は球技の専門誌を発行していて、なぜ使っているのかと編集長に尋ねたときに、「NHKに最も近いところにある会社だから」という、おそらく冗談だと思われる返事をされました。

球技というのはバレーボール、バスケットボール、テニスで、それぞれの競技団体の御用達(ごようたし)のように小学校、中学校、高等学校のクラブ単位で購入しているという特殊な出版物でした。そのことが、NHKの用字と用語という特殊なものを採用している理由となっていたようです。

その仕事を手伝っていたときに、今でも記憶に残っているのが、副編集長が御用達を「よごうたつ」と読んでいたことです。出版物なので、漢字さえ合っていれば、どのように読んでも関係がないという感じでした。

その編集作業で原稿の間違いを修正していたときに、原稿には「ぎこちない」と書かれていたのですが、私が学んだ文学の先生からは「ぎごちない」が正しいと習っていたことから、“こ”を“ご”に修正したら、そのことを間違いだと編集者から指摘されました。

「NHK用字用語辞典」で確認したら、「ぎごちない」が第1の読みで、「ぎこちない」が第2の読みとなっていました。

アナウンサーが頼りにする「NHKことばのハンドブック」でも、同じように書かれています。そのときに使ったのは初版(1992年版)で、かなり前の話だということがわかります。

ところが、第2版(2005年版)では、「ぎこちない」が第1の読みで、「ぎごちない」が第2の読みと逆転していました。言葉は世の習いに従って正しいものが決まるとはいわれるものの、これは大きすぎる変化でした。

ということで、その当時は私の指摘のほうが正しかったのですが、今では私の言葉づかいのほうが間違いとされる時代になっているのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕