「三」1 人間は“三度”死ぬ

「人間は二度死ぬ」という言葉は、講演やセミナー、講話、書籍などでもよく使われる絶好のキーワードです。一度目の死は、医学的に死亡が確認されたときに迎える死です。生物的には、これ以上に死ぬことはないわけですが、その人のことを記憶に留めていてくれる人がいる限りは、心の中では生き続けることになります。

一度目の死は誰しも避けることができないわけですが、すべての人の記憶から忘れ去られたときが二度目の死ということになります。

そこから、記憶に残る人生を送ることの大切さを伝えるときに「二度死ぬ」ということが言われます。記憶に残るというのは、何も良い記憶だけに限らず、他人から恨みを買うような記憶を残すこともあります。できることなら、喜んで語られるような人間になろう、語り続けられることをしよう、という教訓としても使われています。

名言や格言は、誰が語ったことなのかということが伝えられていても、実際に話した言葉が伝えられるということは少なくて、伝聞によって少しずつ違うことがあるのは当たり前のことです。

ところが、この「二度死ぬ」ということは、「人間は二度死にます。まず死んだ時。それから忘れられた時。」という言葉が正確に伝えられています。それは語った人が、まだ記憶に鮮明に残っている人で、それは作詞家、エッセイストなど幅広い分野で活躍した永六輔さんです。

タイトルに掲げた「人間は三度死ぬ」というのは、永六輔さんが言ったことでもなく、それをもじって他の人が広めたことでもなくて、私が勝手に書き記したことです。

その三度の死は、生物的な死、記憶から忘れ去られた死に続く、実績が忘れられたときです。これを三度目の死と考えています。

誰が始めたことなのかという記憶が世間的にはなくなったとしても、実績が残っているうちは死ぬことがないということを表していて、永六輔さんが言った言葉であることは忘れられたとしても、その言葉の意味が語り続けられているうちは死ぬことはないはずです。

自分が成し遂げたことが引き継がれているうちは死なないということで、三度目の死がないような実績を作っていきたい、それも“思考が合う人”と一緒に作り上げていきたいという思いを持って、この連載コラムを始めました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕