あくまでも噂話116「時代劇で間違っている井戸の形と使い方」

若かりし頃、時代劇の2時間スペシャルが始まり、大手広告代理店のテレビ局出身の方の紹介で、撮影現場に立ち合ったことがあります。主な仕事はスケジュール管理で、出演する方の時間と予定を把握して、出演者に合わせて撮影シーンを調整するという地味な仕事でした。

その仕事は、ずっと座っているのが役割で、撮影現場から少しでも離れる人がいる場合には、私に声をかけるというルールがありました。そのため、私が指定された席を離れることができるのはトイレに行くときだけで、食事も指定席と限られていました。

ずっと座っているだけなので、出演者やスタッフから話を聞くだけ聞くことができました。私の父親が時代劇番組のファンだったこともあり、普通なら聞き流すようなことも関心をもって聞くことができました。

井戸の周りのシーンでは、江戸の市中ということで、本来なら四角の井戸ではないのに、セットを変えることはできないので、そのまま撮影するしかないという話を聞きました。江戸の市中は上水を引き込んでいるので、水道(水の流れ)は浅いところにあって、汲み取りの桶と釣瓶(つるべ)ではなかったのですが、セットにあるのは桶と釣瓶なので、それが使われます。

実際に取水に使われていたのは柄杓(ひしゃく)で、井戸も底のない桶が埋められていました。江戸の町場でも時代劇によく出てくる日本橋界隈は埋立地で、そこを流れる水道は浅くて、神田川の上水を水道橋(駅の水道橋ではなくて実際に水道が通っていた橋)を通じて取り入れていたものなので、柄杓があれば簡単に取水できました。

桶で汲み取るというシーンだけでなくて、浅い井戸なので井戸に落ちて死ぬというようなシーンも実際にはないことです。井戸は時代劇には付き物なので、目にすることが多くて、気になる機会も多いのです。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)