「食う」というのは、あまり上品な言葉づかいではないので、少なくとも「食べる」、上品な言い方の「頂戴する」「召し上がる」という使い方をする人がいます。食事に関わる講習会のときに、普通に食べるという表現でよいだろうに、あまりにも召し上がると連発されて違和感を感じたことがあります。
「人を食った話」という言葉があります。これは相手を小馬鹿にした話や態度のことで、人を人とも思わないかのような扱いという意味でも使われます。この「人を食った話」と言うべきところを、まるで口癖のように「人を食べた話」と使っている人がいました。
そんな言い方をすること自体が、まさに「人を食った」態度と感じてしまうのですが、その方が有名なスポーツ団体の専務理事で、その団体では会長、副会長は名誉職で、実権は専務理事が握っている組織体制だったので、会社でいえば社長にあたることになります。
その団体は全国に支部組織があって、それぞれが◯◯県◯◯協会と名乗っていたので、全国組織の代表者のような立場です。その立場に驕りの感覚があったものか、都道府県の協会のことを“部隊”、各地の会員を“兵隊”と呼ぶような人でした。
ところが、その人たちに対面しているときには、実に紳士的な態度で、「会長」「先生」と呼んでいました。「そう呼んでおけば気分がよくなって言うことを聞いてくれる」と話していたことを覚えています。
その会長や先生が頑張って地方組織を盛り上げてくれて、中央の組織も地方組織のおかげで稼ぐことができていたのに、言うことを聞かなくなると会長をすげ替えさせるようなことがあり、その人たちの実績を食ってしまうような、まさに“人を食べた話”を実践するような人でした。
そんなことを言われたり、書かれたりしないように、という反面教師として、ときどき思い出すようにしています。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)