あくまでも噂話130「甲乙つけ難いvs.どんぐりの背比べ」

あるテレビの音楽番組のハーモニー対抗で、ともによい歌唱をして、どちらに軍配を上げるか困ってしまうようなことになったときに、ゲストコメンテーターの芸能人(といって出身はアナウンサー)が「どんぐりの背比べ」と言ったときにはビックリしました。

ビックリ顔をしていたのは番組のMCも同じで、「ちょっと表現が違うかも」というコメントで返していましたが、そこは「甲乙つけ難い」だろうとツッコミが入るところです。

「甲乙つけ難い」というのは、実力伯仲、拮抗、一歩も譲らない、鍔(つば)迫り合い、互角の勝負、接戦、肩を並べるといった言葉と言い換えがされるので、これで意味合いが伝わります。

甲と乙は、どっちが上なのかというと、甲と乙は契約書に使われる当事者の略称で、立場が上のほうが甲、下のほうが乙となるのが一般的です。戦前の学校の成績表では「甲、乙、丙、丁」とランク分けされていました。

しかし、由来としては古代中国で考えられた十干の順番で、「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」の10種類の呼び名です。どちらが上ということは本来はないので、それこそ「甲乙つけ難い」というのが正しいという感覚です。

これに対して、「どんぐりの背比べ」は、どちらも優位とは言えない、抜きん出ていないということで、平凡で変わりばえがしないという意味で使われるのが本来の形です。

他にたとえると、似たり寄ったり、五十歩百歩、大差ない、どっこいどっこい、目くそ鼻くそという、あまり言われたくない表現になってしまいます。少なくとも、公の場面で使うのには相応しくない言葉です。

こういった用語の使い分けは、アナウンサーなら当たり前に教えられているはずなので、ビックリ顔で見られるのも当然のことです。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)