あくまでも噂話69「話している人の口元を見ない」

話をしている人の顔を見るというのは会話をスムーズにするための基本です。“目は口ほどに物を言う”という諺(ことわざ)がありますが、マスク着用が当たり前の世の中になってからは、ますます口の動きで表情を読み取るのが難しくなり、目の重要度が高まっています。
マスク着用の時代の前から、私は話している人の口元を見ないというマナー違反を日常としてきたので、今の時代は自分にとってはありがたいことかもしれません。口元を見ないのは、口の動きが言葉と一緒に脳に届いていないからです。口に注目していると、脳が混乱するようになります。
腹話術のいっこく堂の特技は、口のほうが先に動いて、声が遅れてくるというものですが、私の場合には口の動きが遅れて見えています。これは異常なことなのかというと、実は誰にも起こっていることなのですが、脳が調整をして口の動きと声を一致させているのです。
視覚と聴覚では聴覚のほうが反応が早くなっています。これは暗闇の中でも危険を察知する能力として研ぎ澄まされてきたからだと説明されていますが、耳から入ってきた音声情報が電気信号となって音を認識する聴覚野は耳のすぐ上にあります。
それに対して目から入ってきた視覚情報は眼球網膜から視神経を通って後頭葉の視覚野に送られ、ここで画像化されています。この距離の差から、同時に目と耳から入ってきた情報は0.5秒の差をもって伝わります。この0.5秒の差を脳が調整して、同時に入ってきたように感じさせているのです。
この調整は、ずっとできていたのですが、今から20年以上前に一過性脳虚血発作が起こったのをきっかけに、ズレをズレのまま感じるようになってしまいました。一過性脳虚血発作は血栓が脳血管に詰まるもので、24時間未満が一過性脳虚血発作、24時間以上が脳梗塞と診断されます。詰まった先が、ズレを調整するところだったようです。
私の場合には飲酒としているときに詰まったので、血管が緩んでいた状態であったことから、すぐに抜けたようです。それを主治医に指摘されたときに、「これからは頻繁に酒を飲みます」と言って、それは違うと叱られました。
この視覚と聴覚のズレがあることから、発達障害の資格過敏、聴覚過敏の子どもの困難さが以前よりも理解できるようになり、これは発達障害児の支援には役立っています。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)