ご飯があるから口中調味で健康維持ができる

前回まで口中調味について書いてきましたが、ご飯から日本人の食事の環境を考えてみたいと思います。ご飯を食べるのは何も日本人だけではありません。アジアを中心として、米飯地域は広くて、今ではアメリカやヨーロッパでも栽培されています。しかし、日本の炊飯による食べ方とは違っています。同じ米を使った料理でもリゾットやパエリアでは生米から調理をしています。
炒飯(チャーハン)は炊いたご飯を炒めていますが、日本では普通に炊いたご飯を使用するのに対して、中国圏(中国と周辺国)では、そのまま食べると芯が残るようなご飯を使っています。これは、わざわざ芯を残しているのではなくて、大陸の水の特徴である硬水を使うとカルシウムとマグネシウムのせいで、水が浸透しにくく、硬く炊けてしまいます。
他に中国大陸では、煮る、蒸すという方法で米を食べていますが、これも硬く炊けるご飯を軟らかくして食べるための方法です。
日本の炊飯の技術は、煮る、蒸す、焼くという段階を経て、軟らかくて食べやすいご飯となっています。炊飯器も、昔の薪で炊いていた状態を的確に再現しています。今でこそ炊飯器の機能が向上したので大陸の硬水を入れても、それなりの軟らかさに炊けるようになり、インバウンドが盛んな時期の一番の売れ筋は炊飯器でした。今では中国企業も高性能の炊飯器を開発しています。
中国の伝統的なご飯の料理は、煮ても、蒸しても、炒めても味付けが必要です。炊いたご飯は、まったく味付けがなくてもおいしく食べることはできますが、例えば煮たおかゆは塩味がないとおいしくは食べられません。ご飯に味がないとは言わないものの、ほとんど味らしい味がないご飯があれば、さまざまな料理を食べることができます。
ところが、味がついたパンやパスタなどは、一緒に食べられるおかずが決まってきます。ご飯も炊く以外の方法ではおかずの種類が限られてきます。このことが体調に合わせて、おかずの味わいを変え、食べるものを変えていくことができにくくなっています。今の日本人は、おかずの種類が限られてくる傾向があって、日本人本来の食べ方とおかずの内容について、再考する時期ではないかと考えています。