学習障害121 算数障害の困難さを理解するために

学習障害の中に算数障害があります。計算が苦手で、数の感覚がつかめないことから、同じ計算式を出されても計算に時間がかかるのが特徴です。計算ができないわけではなくて、時間がかかるだけとはいっても、他の学習障害もあると、時間が解決してくれるというわけにはいかないことがあります。識字障害は文字を的確に読むことができないもので、書字障害はうまく書くことができないものです。識字障害では何が問われているのかが把握できず、書字障害ではわかっていても表現がうまくいきません。ある程度の文字表現ができたとしても、それに時間がかかりすぎると、結局はタイムアップで不正解にされてしまいます。
学習障害は、一つのことだけがハードルになっているとは限らず、3つのことが絡み合って困難さを増しているということが多いのです。この困難さを保護者や教育に携わる人が充分に理解をしていれば改善への近道もあるかもしれませんが、どんな困難を抱えているのかが理解されていないということも少なくありません。
算数の計算、中でも小学生の計算は一般には簡単なものに感じます。1の10倍が10、10の10倍が100と十進法になっていて、足し算であれば桁の繰り上がりをしていけば1から9の一桁の計算の繰り返しであるという大原則があります。この計算の“ものさし”が身についていないということを想像してほしいのです。
例としてあげるのが正しいか自信がないところではあるのですが、江戸時代の物差しをいまだに使っている人に、今のメートル法の物差しを渡して長さを測ることを課題と出したら、計測に時間がかかるどころか、どうやって計測してよいのか想像がつかずに、途中で諦めてしまうということにもなりかねません。
江戸時代に限らず、日本古来の計算単位の尺貫法は法律的には1958年(昭和33年)まで使われていました。メートル法が日本で定められたのは1891年(明治24年)のことで、67年間も併用して使われていました。1958年というと東京タワーの建設が始まった年ですが、土地や建物に関する計量には1966年(昭和41年)まで尺貫法が用いられていました。
尺貫法は、長さについては単位が異なるだけで十進法の理解でよいので、まだなんとかすることができたとしても、尺貫法には十進法でないものもあって、これでは計算は不可能と感じる人もいます。何しろ尺貫法は距離、重量、金銭計算まで及んでいて、すべて単位が違っていたのですから。