なぜ牛乳は朝に飲むものになったのか

牛乳を飲みながらパンを食べるという学校給食のスタイルは、いつしか家庭にも持ち込まれて、パンに牛乳が朝食の定番となりました。学校給食で教えられた「三角形の食べ順」は子どもから親にも祖父母にも伝えられて、パンを牛乳で流し込み、次におかずを食べることも広まりました。
この話をアメリカの栄養学者にしたときに、「なぜ日本人は朝食にしか牛乳を飲まないのか」と聞かれて返答に困ったことがあります。そこで付き合いがあった乳業メーカーの研究者に問い合わせしたところ、牛乳配達のことを教えてもらいました。
昭和30年代には家庭に冷蔵庫が普及するまでは、ビン入りの牛乳は牛乳屋さんまでは冷蔵配送されたものの、そこから先は冷蔵ができなかったので、気温が上がらない早朝に配達して、すぐに飲むしかなかったという状況があります。新聞を早朝に配達する新聞少年が増えたのと同じ時期に牛乳少年もいて、私は小学生のときには同級生が配達する牛乳を飲んでいました。家に冷蔵庫はあったものの、牛乳は早く飲んだほうがよいというので、家族で1本を分けて飲んでいました。
今、新聞少年のことをネット検索すると山田太郎歌唱の「新聞少年」が上位に出てきて、本来の話は、なかなか出てきません。牛乳少年のほうは漫才のミルクボーイばかりで、少年時代の牛乳少年はヒットしません。
アメリカの栄養学者からは、牛乳はいつ飲んでもよいものだ、という話をされましたが、牛乳は洋食に合う味わいで、ご飯を中心とした日本の伝統的な食事と相性はよくありません。肉をメインにした洋食が増えていく中でも、ご飯を中心にした食事だと牛乳よりも汁物という文化のために、パンを食べる機会でないと、なかなか馴染まないということで、今でも日本人の食卓では牛乳は朝食という常識は覆りそうもありません。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)