アルコールは睡眠に有効なのか

医薬品嫌いの人は確かにいます。医薬品には副作用がある、一度飲んだら一生飲み続けなければならない、という理由をあげている人もいます。医薬品が怖いから、医薬品と同じような効果があると期待される健康食品を摂っているという人も増えてきています。健康食品の利用者が増えているのは何も高齢者を対象としたテレビのコマーシャルで派手な内容を繰り返し流しているせいだけではないのです。
ちなみに、医薬品では「飲む」、健康食品では「摂る」と使い分けています。これは医薬品医療機器法(正式には「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」)に基づく監視指導マニュアルでは医薬品と間違われるような伝え方をすることは規制されていることから「飲む」という表現は健康食品業界では使わないようにしています。粒状、粉状、カプセル状ではない飲料であっても、健康機能を打ち出して販売されるものは「摂る」と表現されています。
医薬品は怖いから健康食品という人の考えは、以前なら否定できないところもあったかもしれませんが、医薬品も進歩を続けていて、副作用と呼べないようなことが起こる可能性もあるという程度のものもあり、医薬品を飲みながら生活改善に取り組めば、飲まなくてもよい状態にすることもできるようになっています。もちろん、早めの段階で治療を始めて、悪化して手遅れになる前に飲むことが条件になります。
よく例に出される未病状態は、二段階に分けられていて、医学による治療なしでも元の健康な状態に戻れるのが第一段階(未病1)、治療を受けて第一段階に戻れるのが第二段階(未病2)とする考えです。第一段階では診断基準に達していない、いわゆる“高めの状態”ということもあり、健康食品を使って改善するというのは当然の発想といえます。
医薬品は怖いというのを、酒を飲む口実にしている人もいます。充分な睡眠時間、睡眠の質が確保できないことは、疲労が蓄積して血圧や血糖値を上昇させることにもなります。寝つきが悪いからといって睡眠薬に頼るのではなく、自力で眠る努力をする助けとして寝酒を飲むという人も少なからずいます。飲酒をすると寝つきがよくなるのは確かですが、睡眠が浅くなりやすく、途中で目が覚めたり、睡眠時間の割には疲れが取れていないということにもなります。このことは睡眠中の脳波や酸素供給量などの試験でも確かめられています。
自律神経の働きや自然のリズムで眠くなり、レム睡眠(浅い眠り)とノンレム睡眠(深い眠り)を繰り返すという睡眠周期ではなく、アルコールの力を借りて眠ると、リズムが整えられないままの睡眠となってしまうということです。
睡眠薬には依存性が高いという指摘もあります。以前の睡眠薬には依存性があり、中断すると禁断症状が出るということもありましたが、現在の主流の睡眠薬は処方どおりに飲んでいる分にはアルコールよりも安全なものとなっています。アルコールにこそ依存性があります。飲めば飲むほど睡眠の状態が悪くなって、もっと多くの量、もっと強いアルコールを飲まなければ寝つけない状態にもなりかねません。よい睡眠のために最もよいのは、寝酒をしないことです。