ポストコロナ「急いで回れ」2

コロナ禍での健康度の低下の原因は複数ある中で、外出自粛の運動不足が最も大きな影響を与えていると考えられています。その解消のために何をすればよいのかということについては、この連続コラムの中で触れていきますが、外出自粛は歩く時間が減っただけでなく、病院に行く機会も減りました。通院患者の数を見ると、コロナ前に比べて20%ほども減少しました。どうしても病院に行かなければならない人はコロナ禍であっても通院を続けました。減少した中で多いのは、高血圧、糖尿病、脂質異常症(高中性脂肪血症、高LDLコレステロール血症)での通院患者です。
これらの生活習慣病は自覚症状が初期段階では現れにくいので、病院に通わないまま過ごしている人も多いのですが、国民の健康度を考える上では早く検査で発見して、できるだけ早く治療をして、その先の動脈硬化、心疾患(心臓病)、脳血管疾患に進まないように抑えなければならない人たちです。しかし、こういう人に限って、なかなか病院に来てくれないという悩みがあります。
いつも通院している人を“常連”扱いしてはいけないのですが、ウォーキングの参加者と同じで、いつも歩いている人にウォーキングのイベントに来てもらっても、全体的な地域の健康度はあまり高まっていきません。それに対して、あまり歩かない人をウォーキングの機会に引っ張り出すことができれば、そんなに長く歩かなくても、全体的な健康度は高まります。目標としているのは住民が平均して以前よりも1000歩プラスすることです。時間とすれば10分ほどのウォーキングで、これを厚生労働省は「+10」(プラステン)として推奨しています。
ウォーキングの参加者はダイエットと同じような感じで、ダイエットしなくてよい人がやせたがり、ダイエットしなければならない人がやせようとしないということがあります。どうやって、歩いてほしい人、歩いて生活習慣病の予防と改善に取り組んでほしい人の参加を促すかということですが、それには楽しく歩ける場の提供という考え方もあります。これまでのウォーキングイベントがそうでした。しかし、ここまでコロナ禍で健康度の低下が明らかになってきた段階では、簡単に集客できる方法ではなくて「急がば回れ」の発想をもって参加者を集める、それも集めることに「急いで回れ」という方針で臨むべきだと考えています。