健康ウォーキング9 歩いて健康寿命を延伸2

運動と健康寿命延伸の研究として「中之条研究」の成果が基本データとして取り上げられています。この研究は群馬県中之条町で実施された65歳以上の全住民である約5000人(重度の認知症や寝たきりの人を除く)を対象に平成12年(2000年)から10年以上にわたって実施された健康研究で、現在も継続されています。その研究の結果、歩数としては1日に8000歩以上歩くこと、そして中強度の歩行を20分間以上取り入れることが提言されています。中強度の歩行は、なんとか会話ができる程度の早歩きを指しています。
ただ歩くのではなく、中強度の歩行によって血流を高めることが健康効果を高め、負担をかけすぎない運動量とされています。そのような運動量の確保には早歩きのほかに坂道歩行や負荷歩行(荷物を背負った歩行)のほか、無酸素領域に達するアクティブウォーキングが適しています。インターバルウォーキングで用いられているノルディックスタイルのウォーキング(ノルディックウォーキング、ポールウォーキング)は上半身も使って勢いよく前進することができる上に、足腰への負担が減り、さらに本人が自覚するよりも身体的な負荷が強くかかることから、無理をせずに中強度の歩行を継続することができる歩行法として採用されています。
中之条研究では1日の平均歩行数と、そのうちの中強度の活動時間によって、予防できる病気を示しています。中之条研究では、歩行数と中強度活動時間が増すごとに有病率が低くなることが判明していますが、1万2000歩(うち中強度の活動が40分)以上の運動は健康を害する可能性があることを示しています。
ウォーキングは有酸素運動によって全身の血流が促進され、脳の血流が高まることが知られています。アルツハイマー病発症に対する危険因子で最も影響度が高いのは「身体的不活動」、いわゆる運動不足で、うつや肥満、喫煙を大きく上回っています。
中之条研究では、1日に7000歩以上、中強度活動時間15分以上のグループでは認知症がいなかったと報告されています。海外の研究では、認知症の予防には脳トレーニングよりもウォーキングを中心とした運動でより効果があるとの研究成果があります。