健康デザイン43 医師の健康寿命

2024年4月は医療業界の大きな転換点で、「医師の働き方改革」がスタートします。

これまでの日本の医療は医師の長時間労働によって支えられてきましたが、医療ニーズの変化や医療の高度化、少子化による医療の担い手の減少が進む中で、医師個人の負担が、さらに増加するのは目に見えていることです。

医師が健康を維持して働き続けられるようにすることは、医師本人だけでなく、患者に提供される医療の質と量、安全性を確保するためにも重要なことです。このことから医師の働き方改革の検討が始まりました。

病院の常勤勤務医の約4割が年960時間超、約1割が年1860時間超の時間外・休日労働をしている実態があります。特に救急、外科、産婦人科の長期労働が多くなっています。これらは若手の医師が多くを担っていますが、そのために若い医師が避ける傾向があり、徐々に医師が高齢化していくことが懸念されています。

「健康デザイン39」では医師の健康状態への不安について紹介しましたが、参考データとして使われている岐阜県保険医協会による開業医の平均寿命で70.8歳です。

日本人の平均寿命は男性が81.47歳、女が87.57歳で、男性に当てはめても10年以上も短命という結果です。年代別で見ると60歳代が最も多くて、34.1%を占めています。開業医の平均年齢は60.2歳(2022年)との報告もあり、平均年齢の医師に診てもらえるのは、これも平均であっても10年ほどということになります。

さらに健康寿命(医療や介護に頼らずに日常生活が過ごせる期間)は、男性が72.68歳、女性が75.38歳ということを考えると、医師は健康寿命の平均に達する前に亡くなっていることになります。

一般の平均寿命との差は男性が8.73年、女性が12.06年とのデータがあるので、男性では62歳、平均で男性より6年ほど長生きの女性では68歳になると医師が続けられないという状況になっているということです。
〔健康ジャーナリスト/日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕