健康・火の用心10 長生きの国の食事で長生きできるのか

日本人の平均寿命は男性が世界3位で、以前の2位から下がりました。それに対して女性は世界1位を誇っていますが、ほんの2年前までは2位でした。女性の生活習慣がよくなった結果なのかというと、2位になったときの1位は香港(ホンコン)でした。香港は独立国扱いをされていたものの、中国に併合されたことから統計から消えました。それで1位に返り咲いたということです。

香港が1位になったときに、メディアでは香港の女性の食生活を取り上げた番組や記事が盛んに流されました。中華料理が多く、欧米化した生活から肉食が特に多く、肉食が健康長寿の秘訣と結論づけたテレビ番組もありました。食事の内容に間違いはないとしても、食事だけで平均寿命が高まるわけではありません。

平均寿命は、現在の社会環境(経済、衛生、医療など)が継続したと推定して、今年生まれた子ども(0歳児)が何歳まで生きる可能性があるかという年齢を指します。社会情勢、経済状況などが重要で、食事内容は経済的な進展が影響するのは明らかです。

香港は高齢化率が高くても、実際に地域を支えているのは労働力を提供してくれていた中国大陸からの出稼ぎの方々でした。地域で生活している人のうち、経済的に上のほうにいるのが香港の住民で、下のほうにいるのが出稼ぎの人ということになると、地域住民の平均年齢が高まるのは当然の結果と言えます。

それなのに、食事の内容ばかりに着目して、特徴的な食材や料理を取り上げて、それを食べれば長生きできるというような報道は「間違いである」と言っても、それこそ間違いではありません。

日本人の平均寿命は終戦後の初めての調査(昭和22年)では、男性が初めて50歳を超えて、男女ともに50歳を超えた記念すべき年でした。そのときには今でいう先進国の中でも最下位で、当時はアメリカは60歳以上、北欧は70歳以上でした。

そこから一気に世界のトップランクまで駆け上がったのは、不足している肉、乳製品などを摂り、穀類、野菜、魚なども摂り続けて、バランスがよい食生活をしてきたからです。しかし、そのバランスが崩れてから久しく、それが平均寿命に影響しないか不安材料になっています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕