健康寿命延伸のための提言21 提言のエビデンス2飲酒3

国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第3回)を紹介します。
飲酒にリスクについて、世界の11の前向き研究(およそ7万5000人、うち認知症発症4500人)のメタ解析によれば、12.5g(日本酒換算で0.5合)以下のアルコール摂取では認知症のリスクが低下しますが、38g(日本酒換算で1.7合)以上の摂取では認知症のリスクが高くなると報告されています。WHO(世界保健機関)のガイドラインでは、認知機能の低下や認知症リスクを軽減できる可能性があることから、過度の飲酒を減らす、または止めることが推奨されています。
眠りをよくするために飲む寝酒は眠気をもよおしますが、およそ1万8000人の日本人のアンケート調査によれば、寝酒は早朝覚醒など睡眠維持困難と関連していました。さらに、深い睡眠を妨げるという報告もあり、日本睡眠学会のガイドラインでも睡眠を促進させるための寝酒は推奨されていません。
妊娠中の飲酒は、初期・中期・後期のすべての時期を通じて、胎児に悪影響を及ぼすことが報告されています。妊娠中の習慣的な飲酒によって引き起こされる胎児性アルコール症候群の症状は多岐に渡り、末梢神経障害、歩行障害、言語障害、慢性中耳炎などが特に多く報告されています。
成人でも過剰飲酒によって脳萎縮が認められることが報告されていますが、胃青年の習慣的飲酒は行動や認知機能の障害、脳の生理学的変化、神経解剖学的変化などの多様な障害を引き起こすことが報告されています。また、未成年の過剰飲酒によって衝動性の制御の成熟が遅れることが報告されています。