健康寿命延伸のための提言46 提言のエビデンス6心理社会的要因4

国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第4回)を紹介します。
複数のコホート研究で、短い睡眠時間や不眠により、循環器病、高血圧、肥満、耐糖能障害、メタボリックシンドロームを発症するリスクが増加することが報告されています。例えば、日本での2研究を含む11コホート研究のメタ解析によれば、睡眠時間は7〜8時間が最も糖尿病になるリスクが低く、1時間増加または減少するごとにリスクがおよそ1.1倍高まると報告されています。他にも若年層を対象としたメタ解析では、睡眠不足や質の悪い睡眠と肥満との関連が報告されています。なお、睡眠時無呼吸症候群の場合、睡眠の質と睡眠時間の確保が難しくなります。睡眠を専門とする医師やかかりつけ医などに相談することが推奨されています。
さらに、短時間睡眠、過度に長時間の睡眠は、うつ病リスクを増加させることも示されています。7つのコホート研究(およそ25,000人)のメタ解析によれば、標準睡眠時間の人に比べて睡眠時間が短い人も長い人もうつ病のリスクが増加することが報告されています。
睡眠や覚醒に関する病気は、不眠症や睡眠時無呼吸症候群以外にもさまざまなものがあります。睡眠に関連する問題は、夜だけでなく、日中にも眠気や倦怠感といった症状が強く表れることがあり、うつ病や糖尿病などの生活習慣病、認知症などの神経変性疾患と密接に関わっている病気も少なくないと考えられています。不眠症や睡眠時無呼吸症候群などの他に、日中の耐え難い眠気、睡眠リズムが崩れて日常生活に支障が出るなど、自覚症状や家族などから指摘されて困っている場合は、睡眠障害外来に相談することが推奨されています。