健康情報7 脂肪性肝疾患と食行動の関連

脂肪性肝疾患というと、以前はアルコールの過剰摂取が要因とされて、飲酒を控えれば肝障害は起こらない、飲酒をしていなければ肝臓は大丈夫という考えが大半を占めていたところがあります。

ところが、今では脂肪の摂取量の増加や、過剰な体脂肪のために肝臓に負担がかかるようになり、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に伴う肝硬変、肝発がん、心臓血管病などが問題とされるようになりました。

肥満人口の増加によって、さらに重要な問題であることが認識される中、NAFLDの名称の差別や偏見の解消を目的として、2023年には脂肪性肝疾患の新たな定義であるMASLD(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)が提唱されています。

MASLDは脂肪肝と過体重、糖代謝異常、高血圧、脂質異常症を併発することで診断され、NAFLDの高リスク因子を考慮した疾患概念として定義されました。

このような流れを受ける形で、岐阜大学保健管理センターのグループは、若年成人男性のMASLDの実態と食行動の関連を明らかにして発表を行いました。

対象者は健康診断を受診した男子大学院生322名で、腹部超音波検査によってMASLDの実態を明らかにして、日本肥満学会の推奨する食行動問診票を用いて食行動との関連が検討されました。

その結果、年齢中央値22歳の若年成人男性では11%がMASLD、16%がNAFLDを有していました。また、MASLDを有する者の食行動問診表の合計点数は、MASLDがない者と比較して有意に高いことが明らかになっていました。

食行動との関連として、食行動問診表で合計点数が高いほど、MASLDのリスクが増加していて、特に「体質や体重に関する認識」がリスク上昇との関連が強いことが示されています。

一般的には日本人の約30%がNAFLDを有するとされていて、岐阜大学保健管理センターのグループは2023年に若年成人男性の約17%にNAFLDが存在することを報告しています。

今回の研究では、若年成人男性でも11%がMASLDを有することが明らかになりました。そして、MASLDは肥満や糖尿病などの代謝異常との関連が高いことから、生活習慣の是正や行動変容によって改善する可能性があり、若年世代から食事療法、運動療法を含めた生活指導が必要である可能性が示唆されました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕