偽る脳力2 実践としての原稿執筆

現状がよい状態であるほど、それが継続することを望むのは人間としては当たり前のことで、悪いことが起こらないことを前提として仕事をするのも、また当然のことと言えます。それが今の時代には通じないことはコロナ禍を経験して多くの人が気づいているはずなのに、以前と同じようになりたい、以前と同じよい思いをしたいという感覚が優って、同じことを繰り返すのも、あらゆる場面で目にすることです。

「危機管理意識が不足している」とコンサルタントに指摘されることがあり、会議室では納得したつもりでも、実際に行動を起こす段になると、言い訳を考え、適当な理由をつけるという人がいることも多くの人が経験していることです。

その理由は何かということは自分の経験から気づいていましたが、文章にして残そうと思うことはありませんでした。というのは、自分にも少なからずあることで、「自分のことを棚に上げて」と指摘されかねないことでもあったからです。

これも言い訳と言われれば、それまでではあるのですが、人生を見直す指導を受けたことをきっかけに、自分のことを書き残すことを決めました。すべてを手放して “なりたい自分”になるためにゼロベースから組み立てていくことを指導で示してもらいました。

そのときには体調も問題もあり、新たなものを生み出すことは大きく減らして、これまで積み重ねてきたコンテンツや情報源、人脈などを多くの人に活用してもらうことに切り替えることを決断しました。

大学生になったときから毎日、何らかの原稿を書き続けてきた身には、50年以上のルーティンは寂しいというよりも自分の存在価値が失われるような感覚もありました。社会人になってからは原稿書きを仕事にしてきたので、仕事以外で書いた記憶がありません。

まったく違った原稿を書いて、自分の“脳力”を再確認しようと思ったときに、天から降ってきたかのように浮かんだのが「偽る脳力」というキーワードでした。

書いていくうちに何が変わるのか、それを確かめるために100本の原稿を書いていくことを始めました。

文量と締め切りを絶対条件として書き続けてきたので、100本は達成できるはずですが、まるで苦行のようにも感じる原稿書きに取り組むのも、完成したときの自分の変化を想像すると、“苦の先の楽”が楽しみで仕方がありません。

このようなことを書いているのも、「偽る脳力」を発揮するための自分なりの戦略だと考えているところです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕