充分な睡眠が食欲を抑えてくれる

満腹を感じさせるホルモンのレプチンには中性脂肪の蓄積を抑制して、エネルギー消費を亢進する作用があるのですが、レプチンと逆の働きをして、食欲のバランスを取っているホルモンの一つにグレリンがあります。レプチンの分泌量が増加するとグレリンの分泌が低下し、逆にレプチンの分泌量が減少するとグレリンの分泌量が増加するというバランスが取れた関係になっています。グレリンは胃から分泌され、間脳の視床下部に作用するペプチドホルモンで、食欲中枢を刺激して食欲を増進させています。
満腹状態でも、おいしいと感じるものを目にすると食欲が湧くことは別腹と呼ばれていますが、その別腹現象が起こるのもグリレンの働きによります。精神的な食欲の高まりによってグレリンが分泌されるとともに、胃の蠕動運動が始まり、胃の上部に空間が生じて、食べ物を入れることができるためだと説明されています。また、胃の病気や不調によって胃壁が傷つくと食欲が低下するのは、胃からのグレリンの分泌が低下するからだと考えられています。
グレリンは、睡眠不足になると分泌量が増えて食欲が増していきますが、それと同時にレプチンの分泌が減って満腹を感じにくくなります。これは睡眠不足に対応するために、活動に使われるエネルギー量を増やすための反応で、睡眠不足が続くと食欲が増して、太ることになりかねません。
夜更かしをして夜遅くに食べることは中性脂肪を蓄積させる原因となっていますが、それに重ねてグレリンの作用が関係しているのです。
8時間睡眠の人が5時間睡眠にしたところ、レプチンの分泌が約15%低下して、グレリンが約15%増加したとの研究報告があります。
日本人は歴史的に栄養摂取量が少なかったことからグレリンの分泌量が多く、睡眠時間の短さや熟睡しにくい人が増えてきているだけに、睡眠時間は充分に取るように心がけたいものです。