発達栄養学27 入浴の温度と消化吸収の変化

自律神経は、自ら律すると書くように、自分の意思とは無関係に働いていて、その調整を自力ですることはできないというのが大原則です。興奮してきて、心拍数も呼吸数も増えたときに、頑張って落ち着こうとしても、交感神経の働きが過剰になったときには、自分に言い聞かせたり、深呼吸をしたくらいでは副交感神経の働きが盛んになるように切り替わってくれるようなことはありません。
外からのアプローチで一つだけコントロールが可能なことがあるとすれば、温度の変化くらいです。入浴の場合には38℃以下のお湯の温度では副交感神経の働きが盛んになって心身ともにリラックスさせることができます。それに対して、42℃以上の温度では交感神経の働きが盛んになって元気な状態になっていきます。
夕食の時間帯は、そもそも副交感神経の働きが盛んになっていますが、夕食前に、ぬるめのお湯で入浴すると副交感神経の働きがもっと盛んになります。この状態で食事をすると、胃液とインスリンが多く分泌されて、消化がよくなり、吸収もよくなり、さらにインスリンの働きによって肝臓で合成される中性脂肪が多くなるので、栄養を多く蓄えられるようになります。これが本来の姿です。
発達障害によって自律神経の調整が乱れていると、夕方でも交感神経の働きが盛んになって、なかなかリラックスできない状態となります。そんなところに熱めの温度で入浴をしたら、もっと交感神経の働きが盛んになってしまいます。この状態で食事をすると胃液とインスリンの分泌量が減ります。これはダイエットをしている人にとってはよいことかもしれませんが、栄養の吸収ということでいえば、決してよいことではありません。むしろ避けるべきことで、発達障害がある人が、どんな温度で入浴しているのかは家族なら知っておくべきことです。