医者と患者の食事の考えの対立

食事療法は治療のために必要な栄養成分の内容を医師が管理栄養士に指示する食事箋に従って実施されます。その内容は治療には絶対に必要なもので、摂るべき栄養素よりも、治療のために禁止される成分のほうが優先されるのは普通にあることです。その普通の考えが、患者が求める食事の内容と相容れないことも、また普通にあることです。患者の食事の好き嫌いではなくて、自分の身体をよくするために必要だと考えているもので、それも医学的に正しいことであっても、患者の求めは受け入れられないということがあります。
日本メディカルダイエット支援機構の理事長が、大腸ポリープの内視鏡による除去手術を受けて、出血の可能性は0.1%、つまり1000人に1人の確率だと説明を受けました。これは医学書にも載っていることなので、普通は安心して手術を受けているのがほとんどです。ところが、理事長は3日後に大腸からの出血があり、それも除去をしたところに血管が通っていたことから大出血となり、すぐに止血術を受けることになりました。手術自体は内視鏡で簡単に済んだのですが、そのあとの食事が本人の要望と異なるものでした。
大腸の手術後は、手術が簡単なものであっても1週間は硬い不溶性食物繊維だけでなくて軟らかい水溶性食物繊維も禁止。脂肪が多い食品は鶏肉のささみだけ、たんぱく質としてはささみに豆類、納豆、豆腐、卵、乳製品が許可されます。香辛料などの刺激物、コーヒーや紅茶、清涼飲料水も禁止。もちろん酒もタバコも禁止。ということで、日帰り手術をしているところでは、手術前の朝食、昼食は抜きでも夕食は消化がよいものを食べてもよいという指示がされます。
ところが、入院した大病院は術後の昼食、夕食、翌日の朝食は抜き、次の食事では患者(理事長)が求めていたたんぱく質が多くはない食品で、次の夕食以降で牛乳、鶏肉が少し出たくらいでした。ここまでたんぱく質にこだわるのは、出血が多くて輸血寸前までいって、赤血球が不足しているので、すぐにも材料となるたんぱく質を摂る必要があるとの考えからです。大腸の術後の傷さえなければ、たんぱく質を多く摂ってもよいとしても、術後の傷の回復を最優先させると血液の不足は後回しになるのは理屈としては理解できるとしても、血液の不足は全身の回復には悪影響を与えるのも当然のことです。