医食同源ではなく薬食同源

“医食同源”という言葉があります。これは中国に伝わる言葉で、「食品と医療は源が同じ、つまり食品は医学・医術と同じ効果がある」という意味だと説明されています。先日も、そのような主旨の記事が新聞に掲載されていましたが、その担当部署の方を知っていたので、連絡をして話をしました。「それは間違っている」と。
中国には“医食同源”という言葉はありません。中国に伝わるのは“薬食同源”です。医食同源については当法人の理事長が週刊誌の連載の中で、医食同源を造語して1972年から使っている医師に取材をして、そのことを報告しています。薬食同源という言葉を使うと、西洋医学の薬がイメージされるので、薬を食に変えたというものです。
“薬食同源”は、薬と食品の源は同じという意味ですが、それは遠い昔の話ではなく、現在の中国では食品を研究し尽くして病院で用いる医薬品のレベルにまで高めています。そんなことができるのは一つには中国の先端医療では西洋医学の医薬品も東洋医学の漢方薬も同じように考えて使われているからです。中国の医学の基本的な考え方は「証」に基づいた治療です。証は、いわゆる体質のことで、体が温かいか冷たいか、体が強いか弱いか、体の水分が多いか少ないかに分けて、それぞれ中間的な状態も加えて27パターンに分けています。それぞれに適した食品、調理法、食べ方などを指導されます。
食品は薬と同じといっても、体が冷える人が温まる食品を食べれば薬になるものの、体が熱い人が食べた場合には温まりすぎて体に害が出るようになります。その逆に体が冷える人が冷える食品を食べると冷えすぎて害が出ます。つまり、どんなによい食品であっても、健康機能が高い食品であっても、体質に合わない人が食べると薬になるものが毒にもなるということです。
こういった考え方があって、東洋医学の薬は体質に合わせて複数の組み合わせをして処方されていますが、西洋医学の薬も東洋医学の薬と同じような考えで組みわせて使われています。
もう一つ中国の先端医学で注目したいのは、漢方薬や植物を医薬品と同じ研究を行って、治療薬として使えるレベルまで高めていることです。理想的な治療薬は薬効があって副作用がないものです。治療薬を増やすと副作用は高まる傾向があります。それに対して、医薬品の副作用を抑える機能があるキノコの漢方薬から作られた医薬品なら組み合わせて使っても副作用もなく、西洋医学の薬の効果を高めることもできます。
その東洋医学の医薬品と西洋医学の医薬品を「証」に合わせて使うことで、より効果を高めようということです。
漢方から作られた医薬品といっても成分は自然のもので、日本の基準からすると健康食品の素材です。とはいっても、ほとんどの“素材”は中国から持ち出すことはできないのですが、第一類医薬品のカイジ(槐耳)と第二類医薬品の鬼の矢柄(オニノヤガラ)と共生する楢茸(ナラタケ)菌糸体は日本に原材料が輸入され、健康食品として手に入れることができるようになっています。