味覚のトレーニングとしての“口中調味”

日本人の食事のパターンは、今でこそ世界中のほとんどの食品を食べられるようになってから変わってきましたが、基本となっているのはご飯(白米)、おかず、汁物(味噌汁)で、これを交互に食べる方法です。何を一番初めに口にするかは個人の嗜好や癖にもよるものの、おかずを食べて口の中に濃い味が広がったときには、ほとんど味がないご飯を口に入れて味を調整します。ご飯を食べて、薄く感じたときには汁物を口に入れて、少し濃い味にします。
最終的には食卓に出されたものを食べることにはなりますが、このように口の中で味を整える食べ方である“口中調味”によって、体調に合わせた食べ方ができるようになります。元気を出したときには自然と濃いめの口中調味になり、体調がよくないときには薄めの口中調味になります。このトレーニングのおかげで、年齢を重ねて体力が落ちていったときには徐々に薄味に変えていくことができます。
これに対して、欧米やアジアでも大陸の人たちは、青年期に食べた食事を生涯続けています。高齢になっても肉が多く、野菜が少なく、味付けの濃いものを食べることになって、本来なら華麗に合わせて脂肪と塩分が少なくなり、食物繊維が多くなっていかなければならないはずなのに、逆のことをする結果になっています。
日本人が世界中の食品、料理を食べられるのは、ご飯があるからです。ご飯さえあれば、どこの国の料理であっても味を調整しながら食べることができます。ご飯のおかげで、さまざまな食品から栄養を摂ることができるのに、それに反するような食事内容になっています。せめて1日1回は、口中調味で味覚を整える日本人に特有の食べ方のトレーニングをしてほしいと願っています。