噛む噛むeverybody12 身体活動量と歯周病の関連

8020運動は、80歳になっても自分の歯を20本以上残すことによって健康を維持することを目的として厚生労働省によって始められました。運動が始まった当時は、80歳まで生きるために20本の歯を残す方法を知りたいという声もあったのですが、男女ともに平均寿命が80歳を超えた現在(2021年:男性81.47歳、女性87.57歳)では、80歳というのは途中経過となりました。

8020運動は、単に高年齢になっても自分の歯が20本以上あればよいということではなくて、歯が丈夫であれば外出して飲食を楽しむことができて、結果的に身体活動量が高まることによる健康増進を目的としています。

これを裏付ける調査は数多く行われていて、最新の調査結果が広く着目されています。調査を実施したのは国立がん研究センターが中心となった次世代多目的コホート研究で、秋田県横田地域の40〜74歳の男女2160人の歯科健診の結果に基づいて4年間に渡って研究が進められました。

口腔内の慢性炎症性疾患である歯周病は歯の喪失の主な原因の一つであり、糖尿病などの全身疾患と関連されることが示唆されています。

歯周病は世界で11億人が重度歯周病に罹患していると推定されています。日本国内では歯科疾患実態調査(2016年)によると歯周病の有病率は49.4%でした。

今回の研究による歯周病の有病率は、女性では中等度が56.3%、重度が13.2%、男性では中等度が51.7%、重度が20.8%でした。女性は身体活動量が多くなるにつれて、歯周病の重度の傾向が下がりました。身体活動が少ない人を1とすると多い人は0.64のオッズ比となっています。

これに対して男性では身体活動と歯周病との間に関連は見られず、身体活動が少ない人を1とすると身体活動が多くなると増える傾向にあり、多い人は1.36のオッズ比となっていました。男性は喫煙率が高く、歯科定期受診をする人の割合が低く、1日に2回以上のブラッシングをする人や歯間清掃補助器具の使用が少ないことが、身体活動が歯肉に与える影響が少ない原因と考えられています。

日常的に身体活動量が多い人は、炎症性サイトカインの血中濃度が低いことが報告されていて、運動には臓器・組織の炎症を抑制する効果があることが示唆されています。また、運動には末梢血液循環を促す効果があるとされることから、これが歯肉の健康に好影響を与えている可能性が考えられています。
〔健康ジャーナリスト/日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕