噛む噛むeverybody5 食と歯のバランス

歯の形状と本数は、歴史的に食べてきたものの影響を受けています。人の歯は切歯8本、犬歯4本、臼歯20本で構成されています。合計で32本の歯があるわけですが、これに対して肉食の犬の歯は、切歯12本、犬歯4本、前臼歯16本、後臼歯10本で構成されています。

犬は上下の歯の位置がずれていることから臼歯も刃物で切るように働き、肉類を食い千切り、噛み砕くのに適した形状となっています。

草食動物の牛は上側の切歯と犬歯がなく、上側に12本、下側に20本ある歯は穀類や野菜を食べるのに適した形状になっています。人の場合は雑食であることから、草食動物と肉食動物の両方の特徴がある形状となっているのです。

歯は歴史的に食べてきたものに適した形状になっているということですが、人間の歯は切歯が野菜、果物を切ると同時に、肉などを粗く噛む役目があり、犬歯は肉や魚を噛む役割、そして臼歯は穀類、穀類や豆類を磨り潰す役割となっています。

食べてきたものが歯の形状を決めたということであれば、この歯のバランスに合った食事が最もよい栄養バランスということになります。これに合致しているのは昭和30年代から40年前半の日本人の食事だったといいます。この時代には平均寿命が大きく延びた一方で、生活習慣病が少なかった理想的な状態といえます。

肉食が多い欧米人なら犬歯が2倍もあってもよいところですが、今の日本人の犬歯の数では肉を充分に噛み切り、噛み砕くことはできなくなっています。日本人が軟らかく、食べやすい肉類としてハンバーグや脂肪が多い牛肉などを好むようになってきたのは歯の形状と数に関係があるとも考えられているのです。
〔健康ジャーナリスト/日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕