妊娠中の生活が母親と子どもの体調に与える影響4

子どもの健康のための生活面の注意というと誕生後が中心になっていますが、お母さんの胎内にいるときに受けたことが、子どものときだけでなく、生涯にわたって影響を与えることが多くの研究によって明らかにされています。
その研究成果として、国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。その提言のエビデンスの解説から、妊婦に関わる項目を紹介します。
〔4体格〕
妊娠前体重と妊娠中体重増加のどちらについても、太りすぎや、やせすぎは分娩異常分娩(帝王切開、器械分娩など)や、妊娠合併症(妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、常位胎盤早期剥離、遷延分娩)、児の問題(早産、胎児発育不全、低出生体重、過体重)の発生リスクを増加させるなど、あらゆる妊娠予後に影響を与えると報告されています。
これらの合併症の合算リスクを最小にする最適の体重増加量は、妊娠前の体格により異なると考えられています。北米およびヨーロッパを対象とした最近のメタ解析では、妊娠前の体格については、やせから標準体重(BMI16〜25)が最も合算リスクが低いという結果が報告されています。
また、妊娠中の体重増加量については、妊娠前の体格により異なりますが、やせ(BMI<18.5)の女性では14〜16kg、標準体重(BMI18.5〜24.9)の女性では10〜18kg、体重過多(BMI>25)の女性ではBMI25〜30では2〜16kg、BMI30〜35では2〜6kg、BMI35〜40では−4〜0kg、BMI40〜34では−6〜0kgが最もリスクが低いと報告されています。
一方、日本人を対象とした研究では、やせ(BMI17.0〜18.4)では122kg、BMI18.5〜19.9では10.9kg、BMI20.0〜22.9では9.9kg、BMI23.0〜24.9では7.7kg、BMI25.0〜27.4では4.3kgが最もリスクが低いことが示されています。
厚生労働省は、「妊婦のための食生活指針」の中で、妊娠期の至適体重増加チャートを目安にすることを推奨しています。肥満妊婦では、食事療法、運動療法、行動療法などにより、妊娠中の体重増加を抑えることができます。しかし、これらの介入では妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、胎児肥満などの合併症は減少するというエビデンスは報告されていません。