発達栄養学114 野菜が食べられない子どもの対応1味覚の話

野菜が食べられないというのは発達障害に限ったことではありません。発達障害による偏食の対応というと、感覚過敏による味覚や触覚の過敏から、刺激が強すぎるために食べられないことが原因として追求されていますが、発達障害児であっても感覚過敏ではない原因があります。野菜嫌いの対処法はネットメディアでも書籍でも数多く取り上げています。参考にはなるものの、原因を限定して語りすぎているために、その通りにしても食べてくれない、かえって反発を生んで食べにくいという状態から食べられないという状態に進んでしまったということにもなりかねません。
野菜が食べられないことの始まりは、離乳食にもあります。離乳食は母乳もしくは調整粉乳から栄養を摂取している段階から、食事に切り替えていく大事なスタート地点で、食べて栄養を摂取する機能を徐々に働かせていくことを目的としています。液体から初めて個体を摂り入れることになるので、軟らかく、消化しやすいことが大切になります。まずはお粥から始めていきますが、野菜は液状にすりつぶすことから始めます。いろいろな栄養素を摂ることをすすめているメディアなどもあって、初めから多くの種類の野菜を使うこともあります。
しかし、母乳もしくは調整粉乳しか飲んでこなかった乳児にしてみれば、味覚があまりに違っています。乳児の味覚は基本的には五味(甘味、旨味、塩味、酸味、苦味)のうち甘味と旨味が発達しています。甘味というと砂糖の甘みを想像しがちですが、母乳から摂っていたのは乳糖という母乳の甘味で、たんぱく質が分解されることによって生じる甘みです。離乳食として食べるお粥は米の炭水化物で、これを噛んでいると甘味が出てきます。この乳糖の甘味から炭水化物の甘味に移行することによって、お粥をおいしく感じて、食べ物からの栄養摂取に移っていきます。
旨味は母乳にもあります。旨味というと一般的には出汁(だし)の味を指していますが、出汁の素になるのは魚や肉に含まれるたんぱく質の旨味です。たんぱく質の旨味を食品からも感じられるように出汁を味付けに使っているのです。
酸味や苦味は毒物や腐ったものの味で、乳児には危険を感じさせる味覚です。野菜には最近は弱まってきたといっても酸味、苦味があります。酸味はビタミンによって、苦味はミネラルによって生じています。離乳食の段階で、おいしさを感じられるように味付けをした野菜を食べさせていれば、野菜への拒否反応は起こりにくくなりますが、初めて口にする食べ物には極端に過敏な反応をするので、これから先の野菜との長い付き合いの始まりとして、細心の注意をして野菜を加えることが大切です。