子どものときに知った他の家庭の味

新潟県の柏崎に父の実家の米屋があり、そこを頼りに高校時代を過ごしました。
私たちが味付けの好みを調査するときには、生まれた土地、移住した土地の変遷を聞くようにしています。生まれ育った土地で、食事を通じて身につけてきた味覚が塩味の好みを左右することがわかっているからで、それは自分の経験からもわかりました。自分の経験というのは、自分と家族だけのことではなくて、父の転勤によって新潟県内を転校する中で知り合った人たちからも見聞きしたことです。ちなみに小学校は3校、中学校は2校に通い、高校で転校となると進学にも影響するからということで、父の実家がある地域の高校に越境入学することになりました。
母の実家がお寺、父の実家が米屋であったことから、父の職業が“転勤商売”と呼ばれる公務員であるにも関わらず、食べるものに苦労することはありませんでした。出回ったばかりのテレビもあり、小学1年生のときに山奥の村では4台目のテレビが家に来ました。テレビに誘われて、日曜の夕方に近所の人たちが何家族も食材を持ち寄って、日曜の夕食は宴会状態でした。同じような食材、料理であるはずなのに家庭によって味付けが違っていること、自分が常に食べているのは薄味であることを幼いときに実感していました。
健康関連の情報を発信するようになってからのこと、全国の長寿地域を巡って食材や味付けと寿命、生活習慣病の発症率などを調べてレポートしたことがあります。そのときに三世代(子ども、親、祖父母)が一緒に暮らす家庭は長寿者が多いことを報告しています。そこに着目するきっかけとなったのは、自身が育った三世代の環境(父の実家、母の実家)だけでなく、子どもだったときに山奥の村で持ち寄られた各家庭の味の違いを知った体験と、父から聞いていた塩味が強い食事は寿命を短くするという教えがあったからと考えています。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)